『日本の動物観:人と動物の関係史』

石田戢・濱野佐代子・花園誠・瀬戸口明久

(2013年3月15日刊行,東京大学出版会,東京,vi+274 pp., 本体価格4,200円,ISBN:9784130602228版元ページ

現代の日本人と動物との関わり合いを「家庭動物(ペット)」,「商業動物(家畜)」,「野生動物」,そして「展示動物(動物園)」の四つの切り口から論じ,それぞれをひとりの著者が担当している.過去の日本人と動物との関係については,たとえば中村禎里日本人の動物観:変身譚の歴史』(1984年5月15日刊行,海鳴社,東京,viii+302 pp.)のように,文化史的視点から日本人の “過去” の動物間の変遷について考察した研究が挙げられる.本書は,それとは対照的に,むしろ “現代の日本” に軸足を置いている点が特徴だ.

この点については,昨年刊行された論集:奥野克巳・山口未花子・近藤祉秋(編)『人と動物の人類学』(2012年9月19日刊行,春風社[シリーズ〈来たるべき人類学〉・5],東京,xvi+363 pp., 本体価格2,381円,ISBN:978461103254目次版元ページ)では,日本という制約を外した上で,世界的に見た人間と動物との現代的関係を幅広く論じていることが思い出される.

なお,本書の筆頭著者が代表を務めている〈動物観研究会〉という団体があって,ジャーナル『動物観研究』を発行していることを初めて知った.

【目次】
はじめに(石田戢) i


序章 動物観の系譜(石田戢) 1


第I部 家庭動物(濱野佐代子)

第1章 家庭動物とのつきあい 19
第2章 「家族」としてのコンパニオンアニマル 36
第3章 コンパニオンアニマルとのかかわり方の負の側面 55

第II部 産業動物(花園誠)

第4章 産業動物の歴史 73
第5章 「すみわけ」の動物観 104
第6章 産業動物と動物観 124

第III部 野生動物(瀬戸口明久)

第7章 「野生」をめぐる動物観 145
第8章 「野鳥」をめぐる動物観 157
第9章 「野猿」をめぐる動物観 171

第IV部 展示動物(石田戢)

第10章 珍獣としての動物 189
第11章 「ふれあい」とお世話 209
第12章 動物と動物園 226


終章 動物観のこれから(石田戢) 237


おわりに(石田戢) 249
引用文献 251
索引 269