『二つの文化と科学革命[新装版]』目次

C・P・スノー[松井巻之助訳]
(2011年11月10日刊行,みすず書房[《始まりの本》],東京, 本体価格2,800円, ISBN:9784622083429版元ページ

書評参考本なので速攻で読了.時代も環境も異なる論争の意味を探るには過度の “浅読み” や “深読み” を回避しつつ適切に解読する困難がつきまとう.

【目次】

I 二つの文化と科学革命(1959年リード講演) 1

1 二つの文化 2
2 生まれながらのラダイドとしての知識人 23
3 科学革命 29
4 富めるものと貧しいもの 41

II その後の考察(1963年) 61

 

解説(ステファン・コリーニ[増田珠子訳]、1993年) 119

歴史的に見た「二つの文化」 123
スノーの生涯 130
「二つの文化」という考えの発展 135
反応と論争 143
変わりゆく学問分野の地図 157
専門化 169
変わりゆく世界のなかでの「二つの文化」 175

 

さらなる読書のために 193
人名索引 [i-iv]

『地中海の十字路=シチリアの歴史』目次

藤澤房俊
(2019年6月10日刊行,講談社講談社選書メチエ・703],東京, 261 pp., 本体価格1,750円, ISBN:9784065163283版元ページ

ご恵贈ありがとうございます.トリナクリア!

【目次】
序章 シチリア島から世界史をみる 7
第1章 地中海世界と神々の島 17
第2章 イスラームの支配と王国の栄光 55
第3章 長くて、深い眠り 119
第4章 独立国家の熱望と失望 163
第5章 ファシズム独立運動 195
終章  「シチリア人」の自画像 233

 

あとがき 244
参考文献 246
関連年表 252
シチリア王の系譜 [257-253]
索引 [261-258]

『測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』書評

ジェリー・Z・ミュラー[松本裕訳]
(2019年4月16日刊行,みすず書房,東京, xiv+189+22 pp., 本体価格3,000円, ISBN:9784622087939目次版元ページ

現代社会に蔓延する「業績評価」への過度のこだわり( “測定執着” )がいかに害毒を撒き散らしているかを具体的に糾弾する.うっかり油断するといつでも誰でも重篤な “測定執着” の餌食になってしまう.その結果,「一番簡単に測定できるものしか測定しない」,「標準化によって情報の質を落とす」,そして「不正行為」をもたらす(pp. 24-26)など,その悪影響は果てしない.

会計財務主導の「管理主義」にとって「一番の公理は「測定できないものは,管理できない」だ」.この信念が「標準化された,数値化されたデータ」を要求する(p. 37)という指摘は今の日本に広まっている空気そのものではないか.「測定は判断の代わりにはならない.測定は判断を要するものだ」(p. 179)—— 本書の末尾には “測りすぎない” ための「チェックリスト」十箇条(pp. 180-186)がまとめられている.これは役に立つ.

本書を最初に手にとったとき,カバージャケットは方眼紙みたいな地味なデザインだし,『測りすぎ』という書名自体もいまひとつインパクトに欠けるように感じた.しかし,中身のないうわべだけ人受けするキャッチコピーに踊らされる現代社会の愚をするどく指摘する本書には実にふさわしい装丁だと読了後やっと気がついた.みすず書房おそるべし.

『科学と表象:「病原菌」 の歴史』目次

田中祐理子
(2013年3月31日刊行,名古屋大学出版会,名古屋, vi+271+53 pp., 本体価格5,400円, ISBN:9784815807276版元ページ

【目次】
凡例 vi

序章 細菌学の歴史と細菌学の知覚 1


I 本書の対象について —— 「病原菌」 と細菌学の歴史 2
II 実在と認識の問題系 —— 「細菌は外在するか」 13
III 四人の 「父」 たち —— 本書の構成と論点について 35

第 I 部 前史とされたもの

第1章 フラカストロと伝染する病いのたね —— 「感覚できない極小の粒子」 を見ること 41

I 「千里眼者」 43
II 「感覚できない極小の粒子」 61
III フラカストロの 「孤立」 について 78

第2章 レーウェンフックとアニマルキュール —— 「微生物との最初の接触」 87

I 失われていた 「微生物学の父」 93
II アニマルキュール 102
III 視覚の優位と言葉の不在—— レーウェンフックにおける微生物との 「直接接触」 について 124

第 II 部 細菌学という制度的知覚の誕生

第3章 パストゥールと胚種 —— 微生物学の誕生 133

I 文脈 —— 二つの否定 135
II パストゥールの 「パストゥール化」 —— その諸条件と運動 158

第4章 コッホと細菌学的方法 —— 対象の完成と歴史の始まり 203

I 他者としてのコッホ 204
II コッホの科学 —— 「病原菌」 の制度的知覚 230

終章 251

 

あとがき 265
註 [17-53]
引用・参考文献一覧 [6-16]
索引 [1-5]

『生命科学の実験デザイン[第4版]』目次

G・D・ラクストン,N・コルグレイヴ[麻生一枝・南條郁子訳]
(2019年6月15日刊行,名古屋大学出版会,名古屋, xii+304 pp., 本体価格3,600円, ISBN:9784815809508版元ページ

うわ,いきなりピンポイントで刺さりまくる「実験計画法」の新刊が出た.無作為化・偽反復・検出力など全部載ってる.著者は進化学・生態学のプロ.これはオモテの仕事での必読本になりそう.これも名古屋大学出版会だっ.

【目次】
はじめに i
第4版の謝辞 v

第1章 デザインはなぜ大切か 1

 1.1 実験デザインはなぜ必要か 1
 1.2 貧弱なデザインの害悪 4
 1.3 実験デザインと統計解析法の関係 6
 1.4 良い実験デザインはなぜ特に生命科学者にとって重要なのか 8
 1.5 被験体、実験単位、サンプル、そして専門用語 13
 まとめ 17

第2章 仮説を明確にする 19

 2.1 なぜ研究の焦点を定めるのか —— 問い、仮説、予測 20
 2.2 最強の証拠で仮説を検証する 30
 2.3 対照群 35
 2.4 予備研究と予備データの重要性 44
 まとめ 49

第3章 デザインの大枠を選ぶ 51

 3.1 実験操作か、それとも自然のばらつきか 51
 3.2 野外か、それとも実験室か 64
 3.3 生体内か、それとも生体外か 67
 3.4 完璧な研究はない 68
 まとめ 70

第4章 個体間のばらつき、反復、サンプリング 71

 4.1 個体間のばらつきと実験デザインの基本原理 71
 4.2 反復 73
 4.3 サンプルを選ぶ 86
 まとめ 100

第5章 偽反復 103

 5.1 独立とはどういうことか、偽反復とは何か 104
 5.2 偽反復のよくある原因 107
 5.3 非独立性に対処する 114
 5.4 実際問題として反復ができなかったら 118
 5.5 偽反復、第三の変数、交絡変数 119
 5.6 コホート効果、交絡変数、横断的研究 121
 まとめ

第6章 サンプルサイズ、検出力、効果的なデザイン 125

 6.1 適切な数の反復体を選ぶ 126
 6.2 実験の検出力に影響をあたえる要因 129
 6.3 計画している研究の検出力を知る 131
 6.4 研究の検出力を上げる 139
 6.5 いくつかの異なる実験計画の検出力を比較する 149
 まとめ 153

第7章 最もシンプルな実験デザイン —— 1因子完全ランダム化デザイン 155

 7.1 1因子完全ランダム化デザイン 156
 7.2 ランダム化 157
 7.3 因子のレベルが2を超える場合 164
 7.4 完全ランダム化実験の長所と短所 165
 まとめ 167

第8章 複数の因子をもつ実験 —— 複因子デザイン 169

 8.1 因子が2つ以上のランダム化デザイン 169
 8.2 相互作用 171
 8.3 レベルと因子の混同 180
 8.4 分割プロットデザイン(または分割ユニットデザイン) 182
 8.5 ラテン方格デザイン 186
 8.6 統計法について考える 189
 まとめ 192

第9章 完全ランダム化を超えて —— ブロックと共変数 195

 9.1 特定の変数でブロックを作るという考え方 196
 9.2 個体のもつ特徴や、空間や、空間でブロックを作る 199
 9.3 ブロック化の長所と短所 203
 9.4 ペアデザイン 204
 9.5 ブロックの大きさをどう選ぶか 205
 9.6 共変数 206
 9.7 共変数と因子の間の相互作用 210
 まとめ 213

第10章 被験体内デザイン 215

 10.1 被験体内デザインとは何か 216
 10.2 被験体内デザインの長所 216
 10.3 被験体内デザインの短所 217
 10.4 同一個体をくり返し測定するのは、偽反復ではないのか 223
 10.5 いくつかの処理を含む被験体内実験は時間がかかる 224
 10.6 どういう処理列を使うべきか 225
 10.7 被験体内デザインとランダム化ブロックデザイン 226
 10.8 被験体内効果と被験体間効果が混ざった実験のデザイン 227
 まとめ 229

第11章 測定 —— 良質なデータをとるために 231

 11.1 較正 —— 計器のチェックと調整 232
 11.2 正確度と精度 234
 11.3 感度と特異度 242
 11.4 観察者内変動 247
 11.5 観察者間変動 253
 11.6 どう測定するかを決める 255
 11.7 データ記録の落とし穴 267
 まとめ 271

 

 セルフチェック問題の解答例 273
 実験デザインのフローチャート 285
 参考文献 290
 訳者あとがき 297
 索引 301

『「二つの文化」論争:戦後英国の科学・文学・文化政策』目次

ガイ・オルトラーノ[増田珠子訳]
(2019年6月10日刊行,みすず書房,東京, x+289+100 pp., 本体価格6,200円, ISBN:9784622088011版元ページ

C・P・スノーとF・R・リーヴィスの「理系 vs 文系」論客が衝突した1960年前後の社会的背景を探った本.

【目次】
謝辞 vii
はじめに 1
1 C・P・スノーと技術家主義のリベラリズム 27
2 F・R・リーヴィスと急進主義のリベラリズム 69
3 二つのカレッジの物語 109
4 英国社会史の形成 154
5 国家「衰退」の高まり 177
6 ポスト植民地主義の進展 215
7 能力主義期の衰微 242
おわりに 281

 

訳者あとがき 286
原注 [32-100]
参考文献 [6-31]
索引 [1-5]

『Two Cultures?: The Significance of C. P. Snow —— Being the Richmond Lecture, 1962』目次

F. R. Leavis
(1962年刊行, Chatto & Windus, London, 45 pp.)

スノーの積年の “論敵” となったリーヴィスの1962年リッチモンド講演録『二つの文化?』はこれまた50ページもない薄汚れたペーパーバックの冊子だ.同じ古書店でスノーの本の隣りに置かれていたので,よく考えずに買った記憶がある.今回,スノー本:C. P. Snow『The Two Cultures and the Scientific Revolution —— The Rede Lecture 1959/』(1959年刊行[1961年第7刷], Cambridge University Press, New York, iv+58 pp.)の隣りから仲良く “出土” した.

【目次】
Prefatory Note 5
Two Cultures?: The Significance of C. P. Snow 7
Sir Charles Snow's Rede Lecture [Michael Yudkin] 31

『The Two Cultures and the Scientific Revolution —— The Rede Lecture 1959』目次

C. P. Snow
(1959年刊行[1961年第7刷], Cambridge University Press, New York, iv+58 pp.)

スノーの1959年リード講演録『二つの文化』といえば “理系” と “文系” を二極対置して論じたとても有名な古典だ.この原書は,昔々,駒場東大下の古書店でゲットしたもの.たった60ページの小冊子だが,ちゃんとハードカバー装丁されている.あまりに薄っぺらい本なので,“森” のどこに埋もれてかぜんぜんわからなかったのだが,決死の捜索の末こうして発見されたのは幸いだった.この本の日本語訳はいったいどこにお隠れになったんだろう.どこか別のところに埋まっているのかもしれないが,今回の発掘作業では発見できなかった.この機会だからみすず書房の新装版を買うことにしようか:チャールズ・P・スノー[松井巻之助訳]『二つの文化と科学革命[新装版]』(2011年11月10日刊行,みすず書房,東京, 本体価格2,800円, ISBN:9784622083429版元ページ).

【目次】
I. The Two Cultures 1
II. Intellectuals as Natural Luddites 23
III. The Scientific Revolution 30
IV. The Rich and the Poor 43
Notes 55

『100年かけてやる仕事:中世ラテン語の辞書を編む』目次

小倉孝保
(2019年3月22日刊行,プレジデント社,東京, 2 color plates + 301 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784833423151版元ページ

かつて読んだ:サイモン・ウィンチェスター[鈴木主税訳]『博士と狂人 : 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(1999年4月刊行,早川書房,東京)を連想してしまう.

【目次】
カラー口絵(2 pp.)
はじめに 3
第I章 羊皮紙のインク 14
第II章 暗号解読器の部品 34
第III章 コスト削減圧力との戦い 57
第IV章 ラテン語の重要性 72
第V章 時代的背景 92
第VI章 学士院の威信をかけて 114
第VII章 偉人、奇人、狂人 135
第VIII章 ケルト文献プロジェクト 168
第IX章 日本社会と辞書 187
第X章 辞書の完成 280
おわりに 291

『ネコ・かわいい殺し屋:生態系への影響を科学する』『奄美のノネコ:猫の問いかけ』読売新聞書評

  1. ピーター・P・マラ,クリス・サンテラ[岡奈理子・山田文雄・塩野﨑和美・石井信夫訳]『ネコ・かわいい殺し屋:生態系への影響を科学する
    (2019年4月22日刊行,築地書館,東京, 287 pp., 本体価格2,400円, ISBN:9784806715801目次版元ページ
  2. 鹿児島大学鹿児島環境学研究会(編著)『奄美のノネコ:猫の問いかけ』(2019年3月31日刊行,南方新社,鹿児島, 282 pp., 本体価格2,000円, ISBN:9784861244001目次版元ページ

読売新聞大評が紙面掲載された:三中信宏ネコを野に放つと… —— ネコ・かわいい殺し屋…ピーター・P・マラ、クリス・サンテラ著 築地書館 2400円/奄美のノネコ…鹿児島大学鹿児島環境学研究会編 南方新社 2000円」(2019年6月9日).この書評にも書いたように,野放しネコに対してさえ「猫可愛がりする愛猫家」たちはその科学リテラシーの欠如と想像力の貧困が問われる事態になっている.確かに,「ノネコ問題は人間側の問題でもある」のだから,戦略的オペレーションとして “対ノネコ作戦” とともに “対人間作戦” をも同時並行で講じる必要がある —— 今回取り上げた『ネコ・かわいい殺し屋』と『奄美のノネコ』はこの問題の現状を知る格好の本だ.



ネコを野に放つと…

 家畜動物としてのネコは、人間と一定の距離を保ちながら生活している。そんな“無頼”に生きるネコたちを猫可愛がりする愛猫家は少なくないだろう。その一方で、ネコは国際自然保護連合の「侵略的外来種ワースト100」リストに入るほど悪名を轟かせている兇悪な有害動物でもある。

 『ネコ・かわいい殺し屋』では、人間の生活圏の外に出て自由に動き回り自由に子猫を生むノネコ――本書では「野放しネコ」と呼ぶ――が、ネコ本来の強い繁殖力と高度な狩猟能力によって、鳥類など他の野生動物を捕食し絶滅に追いこんだ深刻な事例がいくつも挙げられている。過去の研究の蓄積により、ネコによって数多くの野生動物が今まさに存亡の危機に立たされていることは誰にも否定できない。

 野放しネコ問題に対してはいくつかの解決策があり得る。捕獲したノネコに不妊去勢手術をして放す「TNR」は広く普及してはいるが、個体数がすぐに減るわけではなく捕食が長期間続くので効果は薄い。ネコを効率的に“駆除”するために、毒餌をまいたり罠を仕掛けて捕獲殺処分したり、はてはライフル銃で射殺する“軍事作戦”を展開して一網打尽にしたケースも諸外国ではある。しかし、動物愛護の観点からいえば、野放しネコへのこのような強硬手段には根強い反発があることも事実で、駆除賛成派と反対派が真っ向から対決する“代理戦争”の様相すら呈している。岡奈理子・山田文雄・塩野崎和美・石井信夫訳。

 日本におけるノネコ問題については鹿児島大学の地域貢献活動報告書である『奄美のノネコ』にくわしく報告されている。その解決には、国や地域ごとの動物倫理観の文化的差異を踏まえつつ、科学的知見の社会的受容のあり方をも考慮する幅広い文脈の中でねばり強く論議していく必要があるだろう。ノネコ問題は人間側の問題でもあるから。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年6月9日掲載|2019年6月17日公開)