『イタリア料理大全:厨房の学とよい食の術』

ペッレグリーノ・アルトゥージ[工藤裕子監訳|中山エツコ・柱本元彦・中村浩子訳]
(2020年7月15日刊行,平凡社,東京, 717 pp., 本体価格8,800円, ISBN:978-4-582-63222-4版元ページ

700ページ超にぎっしり詰め込まれた伝統的イタリア家庭料理のレシピ790!

『Bayesian Philosophy of Science: Variations on a Theme by the Reverend Thomas Bayes p(H|E)=p(H)・p(E|H)/p(E)』目次

Jan Sprenger and Stephan Hartmann
(2019年8月刊行,Oxford University Press, New York, xxx+383 pp., ISBN:978-0-19-967211-0 [hbk] → 版元ページ

サブタイトルに「ベイズの定理」がぁ〜(悲鳴)


【目次】
1:Theme: Bayesian Philosophy of Science
2:Variation 1: Confirmation and Induction
3:Variation 2: The No Alternatives Argument
4:Variation 3: Scientific Realism and the No Miracles Argument
5:Variation 4: Learning Conditional Evidence
6:Variation 5: The Problem of Old Evidence
7:Variation 6: Causal Strength
8:Variation 7: Explanatory Power
9:Variation 8: Intertheoretic Reduction
10:Variation 9: Hypothesis Testing and Corroboration
11:Variation 10: Simplicity and Model Selection
12:Variation 11: Scientific Objectivity
13:Variation 12: Models, Idealizations and Objective Chance
Conclusion: The Theme Revisited

『新種の発見:見つけ、名づけ、系統づける動物分類学』読売新聞書評

岡西政典
(2020年4月25日刊行,中央公論新社中公新書・2589],東京, 2 color plates + viii + 252 pp., 本体価格860円, ISBN:978-4-12-102589-0目次版元ページ

読売新聞大評が公開されました:三中信宏分けて名づけるパトス —— 新種の発見 岡西政典著」(2020年8月2日掲載|2020年8月11日公開)

動物分類学の魅力を伝えるこの新書は多くの読者を得るだろう.テヅルモヅルなる珍妙な生きものを通して見る分類学ワールド.分類学者のパトスをささえる分類学固有のロゴスはどこに見いだされるのか.



分けて名づけるパトス

 生物界の多様性は人を魅了してやまない。新たに発見された“新種”の生物には、専門の分類学者たちの手で厳密な命名規約に準拠したラテン語の正式名称(学名)が与えられる。動植物の分類や命名という一見地味なこの分野には意外にも一般読者を惹きつけるものがある。実際、数年前から独語圏や英語圏では“新種”生物の記載と命名の歴史秘話をたどる新刊が相次いで出版されていることからもそれはうかがえる。

 動物分類学の現在を自伝的に紹介した本書もまた読者をぐいぐい引き込む。著者の専門は深海性の棘皮動物クモヒトデに属する「テヅルモヅル」だ。やたら長い触手がうねうねとからみあう得体の知れないこの生物の名前(和名)はいったん耳にしたら忘れることはできない。やはりネーミングは大切だ。

 国内外の海に潜ったり博物館を巡り歩く話はもちろん楽しいが、著者のもくろみはむしろ分類学のおもしろさを伝えることにある。生物分類学とはそもそもいかなる分野なのか、進化学・系統学の最先端の知見は分類体系の構築や“新種”の発見にどのように役立てられるのか。著者自身の体験を踏まえた語り口はこの分野のありのままの姿を伝えている。“新種”の発見と命名に心血を注ぐ若き分類学者ならではの“パトス”が行間からにじみ出る。

 著者は繰り返し「分類学は科学である」と強調する。しかし、つい最近『ズータクサ』という有名な動物分類学の国際誌から、学術雑誌の影響度を測る尺度「インパクト・ファクター」が剥奪されるという事件が起こった。これは分類学の地位を不当に貶める“学問的迫害”だと評者はみなしている。分類学はもはや科学とはみなされなくなったのか。ここはやはり、ステレオタイプな既存の科学像にもはや義理立てせず、次世代の分類学は典型科学とは“別種”の科学であるという矜持を示すべきではないだろうか。分類学固有の“ロゴス”はそこから始まる。

 ◇おかにし・まさのり=1983年生まれ。東大特任助教。動物分類学。日本動物学会論文賞・奨励賞など受賞。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年8月2日掲載|2020年8月11日公開)



なお書評の中で「数年前から独語圏や英語圏では“新種”生物の記載と命名の歴史秘話をたどる新刊が相次いで出版されている」と書いたのは:Michael Ohl『Die Kunst der Benennung』(2015年刊行, Matthes & Seitz, Berlin, 318 pp., ISBN:978-3-95757-089-5 [hbk] → 目次版元ページ)とその英訳本:Michael Ohl[Elisabeth Lauffer 訳]『The Art of Naming』(2018年3月刊行, The MIT Press, Massachusetts, xvi+294 pp., ISBN:978-0-262-03776-1 [hbk] → 目次版元ページ),そして,Stephen B. Heard『Charles Darwin’s Barnacle and David Bowie’s Spider: How Scientific Names Celebrate Adventurers, Heroes, and Even a Few Scoundrels』(2020年3月刊行,Yale University Press, New Haven, xii+241 pp., ISBN:978-0-300-23828-0 [hbk] → 版元ページ)のこと.

『マルジナリアでつかまえて:書かずば読めぬの巻』

山本貴光
(2020年7月31日刊行,本の雑誌社,東京, 309 + viii pp., 本体価格2,000円, ISBN:978-4-86011-445-9版元ページ

あー,こんな本出しちゃダメですよ.日々の┣┣” 撃ちに差し障りありまくり.ひょっとして続刊も出るわけですね.“タイプ” としての本ではなく, “トークン” としての本は,読まれる過程でさまざまなパーソナライズ(マージナリア,メモ書き,付箋などなど)を経験するので,本書のような “読み解き” がおもしろくなるのだろう.本書を手にすると,以前読んだ:古沢和宏『痕跡本のすすめ』(2012年2月17日刊行,太田出版,東京,160 pp., 本体価格1,300円,ISBN:978-4-7783-1297-8書評版元ページ古書五つ葉文庫)を思い出す.私蔵本に残された “痕跡” の数々は手に取る者の想像をかきたてる.