『風の国・ペンギンの島』

水口博也

(2005年8月15日刊行,アップフロントブックスISBN:4847016157



驚異的な「ペンギン写真集」だ.フォークランド,サウスジョージアから南極大陸にいたる,日本から見て“真裏”の地域そのものが十分に異界的だが,南米南端エリアは一年中風が吹き荒れているとはダーウィンのビーグル航海記にも書かれている通りだ.そこに広がるペンギンたちの数々の写真には目が釘付けになる.その愛らしいイメージとは裏腹に,ペンギンたちがとても厳しい環境のもとで,過酷な生存競争をくぐり抜けていることがよく伝わってくる.撮影中,気がつくとキングペンギンのひなたち(といっても立ったときの体長は80センチにもなるらしい)に静かに取り囲まれることもあったという.みだりに“擬人化”してはいけないことはわかっているのだが,「なんなんだ,こいつらは」と思ってしまう.至近距離からのみごとな構図は文章と同等に能弁だ.