『ヴィクトリア湖南部のシクリッド:種形成の現場』

溝入真治・相原光人・岡田典弘(主執筆者)

(2008年7月10日刊行,工学図書,vi+273 pp., ISBNなし)

本書は,〈文科省科研費特定領域研究「種形成の分子機構」報告書〉と銘打たれている.執筆者の一人である岡田さんが領域代表者となったプロジェクトの総括報告書だ.市販されていない図書だが,アフリカのヴィクトリア湖に分布するシクリッド科魚類の甚だしいまでの種分化の“アウトプット”を一千枚ものカラー写真の集積としてまとめた著作で,アカデミックにして読者層が極度に狭い通常の意味での「科研費報告書」とはその性格が大きく異なっている.現地に何度も足を運んで調査をした成果だろう.分子進化学的な研究成果の総括を期待した読者はきっと肩すかしを食らわされるだろう.しかし,むしろ虚心にこの大きなハードカバー本(しかもアート紙!)の「魚の図譜」を一枚ずつめくっていくことが,この湖での種分化の全体構図を疑似体験する近道になるのだろう.

【目次】
はじめに iii

I編 Mwanza Gulf のシクリッド 1



II編 Mwanza Gulf 外のシクリッド 169



採集地別種リスト 253
参考文献 255
業績リスト 259
研究の結果概要 261
あとがき 265
調査風景 267
スナップ写真 268
種名索引 271
共同制作者一覧 273