『Evolutionary Analogies: Is the Process of Scientific Change Analogous to the Organic Change?』

Barbara Gabriella Renzi and Giulio Napolitano

(2011年11月刊行, Cambridge Scholars Publishing, Newcastle upon Tyne, xvi+137 pp., ISBN:9781443833547 [hbk] → 目次版元ページ

科学哲学者たちによる科学理論の変遷をどのような「進化的アナロジー」によって説明しようとしてきたかをレビューする.とくに,David Hull(1988)の言う科学理論の“自然淘汰モデル”に対する異議を唱え,代替モデルとして“定向進化モデル”を提唱している.おもしろいか,と言われれば,なんだかあまり魅力的ではないんですけど.Hull の“自然淘汰モデル”が科学者にとって魅力なのは,彼の言説が科学者にとっての「武器」となる可能性があるからだ.本書の著者のいう科学理論の“定向進化モデル”は,理論や仮説の方向づけられた“突然変異”と“変遷過程”を重視する点で,現場の科学者にとっては使えなさそう.確かに,科学変遷の「記述モデル」としては“淘汰”でも“中立”でも“定向進化”でもかまないのだろうけれど.「タイプ階層(type-hierarchy)」の論議にいたっては,束論における「概念束(conceptual lattice)」の二番煎じみたいでさらに魅力に欠ける.うーん,イマイチ訴求力に欠ける本という印象を受けた.