『居酒屋の誕生:江戸の呑みだおれ文化 』

飯野亮一

(2014年8月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・イ-54-1], 東京,318 pp., ISBN:9784480096371目次版元ページ

江戸時代のごく短い期間に増えた「居酒屋」のルーツと分化を豊富な挿絵とともにたどる.本書で初めて知ったことが多い.日本酒造りの本はほかにもあるが,本書によると,当時流通していた日本酒(主として「下り酒」)は早朝から店開きしていた居酒屋で,もっぱら燗酒として提供されていたという.「燗」とは「熱からず冷たからず」の「間」という語源.また「こなから(二合半)」とは一升の半分の半分の意味.供されていた肴としては豆腐の田楽や芋の煮っころがしをはじめ,鍋料理もこのころ誕生したらしい.さらに魚だけでなく,獣肉も “薬食い” されていた.肉を包むのに番傘の破れ紙が適していたので傘が品不足になってしまい,代わりに竹の皮でくるむようになったとか.その他,縄のれんの起源とか,江戸の庶民がいかに飲んだくれていたかとか,イッキ飲みの出自とか,雑学的知識の宝庫.もう読むしかない.そして,もう呑むしかない.