Fred L. Bookstein
(2018年10月刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+527 pp., ISBN:9781107190948 [hbk] → 目次|版元ページ|コンパニオンサイト)
幾何学的形態測定学をこれから勉強する人にとっては必携本だろう.行き倒れないことを祈るのみ.過去の Bookstein 本で痛い目に遭ったことのある読者にとっては,本書のサブタイトルにある「geometry」とか「statistics」が一筋縄では行かないクセがあることは明らかだろう.冒頭から「統計学とは推測や推定のためのツールではなく “パターン認識” のための道具だ」(p.10)などとバクダン発言が.
これからぼちぼち読み進める覚悟だが,ざっと見渡した感じでは,かの “オレンジ本”:Fred L. Bookstein『Morphometric Tools for Landmark Data: Geometry and Biology』(1991年刊行, Cambridge University Press, Cambridge, xviii+435 pp., ISBN:0521383854 [hbk] → 版元ページ)よりはすっきり体系化されているような気がしないでもない.強いて言えばユニークな「ヴィジュアル多変量統計学」の本か.カバー絵がロダンの〈考える人〉なので,ワタクシも時に考え込みながら読むしかないのだろう.全編にわたって図版がたくさんある載っているので,一見読みやすそうに見えてもけっしてそうじゃない.輪読などしたら死亡者続出が危惧される.ひとりで籠もって読むべき本.裏表紙の「advance praise」には「very user-friendly」で「informal and accessible style」とあるが,その書き手が形態測定学理論家 Kanti V. Mardia 教授だと知れば大幅に割り引いて受け取らないといけない.F. James Rohlf の「an important book not for the impatient」の方が合っているかも.
四年前に出た:Fred L. Bookstein『Measuring and Reasoning: Numerical Inference in the Sciences』(2014年刊行,Cambridge University Press, New York, xxviii + 535 pp. + 4 color plates, ISBN:9781107024151 [hbk] / ISBN:9781107722828 [eBook] → 版元ページ)は途中で行き倒れてしまったのだが,今回の新刊の姉妹本に位置づけられる(「総論」vs. 「各論」という意味で).一挙にまとめてカタをつけたいところ.今回の新刊がロダンの〈考える人〉なら,前著のカバー絵はカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの〈雲海の上の旅人〉.ロマンやなあ.しかし,この二冊を合わせると1,100ページもあるんだ(登攀不能か……).