イアン・ハッキング[広田すみれ・森元良太訳]
(2013年12月28日刊行,慶應義塾大学出版会,東京,viii+394 pp., 本体価格3,800円,ISBN:9784766421033 → 版元ページ)
すでに読み始めている.1660年前後に出現した “確率” 概念のもつ「二元性」についてピックアップ:
- 「注目すべきなのは,突如出現した確率にヤヌス的な二面性があるという点である.一つの面では,確率は統計的であり,偶然的な過程についてのストカスティックな法則に関連している.もう一つの面では,確率は認識論的であり,統計的な背景がまったくない命題についての合理的な信念の度合いを評価するために用いられている.」「現在でもこの二元性は十分明白である.」(p. 18)
- 「確率と帰納は今日どうなっただろうか.…一つは,整合的な信念の理論であり…これは現在「ベイズ主義」と呼ばれているが,私の意見ではトマス・ベイズとはほとんど関係がない.もう一つは,安定した相対頻度の理論を現実世界の予測に適用するものである」(pp. 347-8)
- 「人々はこれまで,ここで終着点と思われるもの,すなわち二つの異なる推論様式とは折り合いがつかなかった.〔そして〕私は今後も折り合いがつかないと考えている.」(p. 348)
- 「それぞれの種類の確率は,… 帰納の問題を解決するためではなく回避するために,独自のやり方を進化させてきたということは学ぶところが多い.信念の度合いによる回避では,ベイズの規則を使って経験から学習するという考えが用いられている.頻度タイプの回避では,帰納的行動という考えが展開されている.純粋に論理的観点からは,どちらの回避にも欠点がある.」(pp. 348-9)
ワタクシのもっている原書は1978年の初版第二刷: Ian Hacking『The Emergence of Probability: A Philosophical Study of Early Ideas about Probability, Induction and Statistical Inference』(1975年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, x+209 pp., ISBN:0521204607 [hbk] → 版元ページ[第2版])だ.
統計学基礎論に関するもっと古い本: Ian Hacking『Logic of Statistical Inference』(1965年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, x+232 pp., ISBN:0521290597 [pbk] → 版元ページ)も本棚の奥に横たわっている.
大学院のころに Anthony W. F. Edwards 『Likelihood』(1972年刊行/1984年, Cambridge University Press [Cambridge Science Classics], Cambridge, ISBN:0521318718 [pbk] → 目次)を輪読したことがあったが,おもしろくてしかも辛かった.ハッピーな統計学ライフを送るには Edwards とか Hacking はまたいで通るのがベストかもしれない.