『鐘の本:ヨーロッパの音と祈りの民俗誌』目次

パウル・ザルトーリ[吉田孝夫訳]
(2019年5月1日刊行,八坂書房,東京, 454+x pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784896942613版元ページ

原書は1932年に出版されている:Paul Satori『Das Buch von Deutschen Glocken. Im Auftrage des Verbandes deutscher Vereine für Volkskunde』(1932年刊行, Walter de Gruyter & Co., Berlin und Leipzig, XII + 258 pp.).もう90年も前の本だが,ドイツにおける「鐘(Glocken)」がたどってきた歴史と文化と民俗を語る上では欠かせない基本文献とのこと.1932年出版の原書はポーランドヴロツワフ大学デジタルライブラリーから DjVu 形式のファイルとして全文公開されている:Digital Library of University of Wroclaw [DjVu: open access].なお,ワタクシはこの DjVu という画像圧縮方式についてぜんぜん知らなかったが,jpeg や pdf よりもはるかに圧縮率が高いとのこと.DjVuLibre というフリーの DjVu ビューワーが公開されている.

中世の西洋の鐘については,ずいぶん前に:阿部謹也甦える中世ヨーロッパ』(1987年7月30日刊行,日本エディタースクール出版部,東京,vi+331 pp.,ISBN:4888881243目次書評)を読んだことがある.一方,日本における鐘については:笹本正治中世の音・近世の音:鐘の音の結ぶ世界』(2008年4月10日刊行,講談社[学術文庫1868],343 pp.,本体価格1,100円,ISBN:9784061598683目次書評版元ページ)がとても参考になった.

いまの打楽器奏者であれば,「グロッケンシュピール(Glockenspiel)」と聞けば,管弦楽吹奏楽で用いられる打楽器の「鉄琴」をすぐ思い浮かべる.しかし,グロッケンシュピールとはもともと音程の異なる複数の鐘からなる「組み鐘」— 「カリヨン(Carillon)」とも呼ばれる — を指していた.この組み鐘で旋律を演奏するのに鍵盤(棒)が用いられた.のちに,鐘の代わりに金属板を配置した「鍵盤付きグロッケンシュピール(jeu de timbre)」が発明され,さらに鍵盤が廃されてマレット(撥)で叩くようになったものが現代の「グロッケンシュピール(鉄琴)」だ.この楽器間の祖先子孫関係はとても興味深い.今でもドイツの古い街では大きな組み鐘が教会などに設置されていることがある.

今回の翻訳に際しては,原書にはまったくない鐘の写真や古い絵などがたくさん追加され,さらに巻末には訳者による詳細な解説記事「西欧における鐘の文化略史──あとがきに代えて」(pp. 417-454)が付されている.すばらしい.

【目次】
緒言 5
序 13

I 鐘の素材と鋳造をめぐって 21

II 鐘の奉献 45

III 鐘の名前 55

IV 聖なる鐘、人に寄り添う鐘 71

V 魔除けの鐘 85

VI 豊饒と健康をもたらす鐘 91

VII 教会に仕える鐘 109

 1 日常の祈りの鐘 109
 2 迷いびとの鐘 124
 3 木曜日の鐘、金曜日の鐘 128
 4 日曜日の鐘 128
 5 祝日の鐘 135
 6 嵐除けの鐘 166

VIII 鐘と家族 183

 1 誕生、洗礼、堅信礼 184
 2 結婚 189
 3 死 193

IX 市民生活と鐘 237

 1 災害や火事を知らせる警鐘 238
 2 都市自治体の鐘 246
 3 法の鐘 256
 4 戦争の犠牲となった鐘 258

X 鐘は語る──響きの「聞きなし」 265

XI 慣用句のなかの鐘 331

XII 鐘の伝説をめぐって 341

 1 地底と水底で鳴る鐘 342
 2 豚が掘り起こす鐘 349
 3 鐘の伝説と関わりの深いその他のモチーフ 359

 

原註 363

 

西欧における鐘の文化略史──あとがきに代えて[吉田孝夫] 417

 

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