『原子論の可能性:近現代哲学における古代的思惟の反響』

田上孝一・本郷朝香(編)
(2018年11月12日刊行,法政大学出版局,東京, xviii+331+iii pp., 本体価格5,500円, ISBN:9784588150968版元ページ

【目次】
序[田上孝一] iii

 

第1章 古代原子論 デモクリトスエピクロス、二つの原子論の差異をめぐって[金澤修] 3
第2章 ピエール・ガッサンディの原子論 エピクロス主義、キリスト教、新科学[坂本邦暢] 59
第3章 ジョン・ロックと近代粒子説 近現代の存在論、認識論への影響[青木滋之] 83
第4章 ライプニッツと原子論 〈アトム〉から〈モナド〉へ[池田真治] 111
第5章 ヒューム『対話』のエピクロス宇宙論 古代原子論とダーウィン主義の間[木島泰三] 153
第6章 コペルニクス的転回と原子論 カントのライプニッツ受容と批判[小谷英生] 181
第7章 マルクスの原子論 現実の理想からの疎外[田上孝一] 201
第8章 ニーチェと原子論 不可分な自己から可分的な自己へ[本郷朝香] 225
第9章 ハイデガーと古代原子論 古代原子論の現象学的解釈の試み[武井徹也] 255
第10章 明治期における実在論の系譜と原子論 「一即多」の哲学の展開[白井雅人] 287
第11章 素粒子と米粒の自己同一性 量子力学的対象と粒子概念[東克明] 311

 

人名索引 [i-iii]

『プランクトンハンドブック淡水編』

中山剛・山口晴代
(2018年10月20日刊行,文一総合出版,東京, 144 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784829981542版元ページ

書評本として読んでいる.顕微鏡写真がとても美麗.藻類ゆるキャラがあちこちに顔を出す.しかし,〈もやしもん〉みたいな「みんな殺すぞ!」的兇悪キャラはどうやらいないようだ.藍藻のミクロキスティス属は強い毒を出すので十分にワルモノだと思うけど.

『中世の覚醒:アリストテレス再発見から知の革命へ』

リチャード・E・ルーベンスタイン[小沢千重子訳]
(2018年10月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・ル-8-1],東京, 580 pp., 本体価格1,700円, ISBN:9784480098849版元ページ

文庫版で600頁もある.

【目次】
はじめに 13

序章 中世のスター・ゲート――西ヨーロッパの覚醒 19

第1章 「知恵者たちの師」――アリストテレスの再発見 37

 1 驚くべき事実――ムスリムの知的財宝 37
 2 プラトンアリストテレス 55
 3 「哲学者」アリストテレス 68
 4 アリストテレス思想の核心 81

第2章 「レディ・フィロソフィー」の殺人――古代の知恵はいかにして失われ、ふたたび見出されたか 95

 1 アウグスティヌスとその時代 95
 2 滅びゆく帝国 111
 3 異端者たちの行方 129
 4 唯一神教アリストテレス 146 

第3章 「彼の本には翼が生えている」――ピエール・アベラールと理性の復権 163

 1 天才登場 163
 2 革命的変化の胎動 177
 3 普遍論争と三位一体説 198
 4 アベラールの死 212

第4章 「そなたを打ち殺す者は祝福されるだろう」――アリストテレスと異端 227

 1 民衆の宗教運動の高まり 227
 2 カタリ派の登場 246
 3 カタリ派の中のアリストテレス 256
 4 アリストテレス自然学への禁令 274

第5章 「ほら、ほら、犬が吠えている」――アリストテレスパリ大学の教師たち 291

 1 托鉢修道士、大学へ 291
 2 「科学的な」神学へ 303
 3 魅惑の自然哲学 315
 4 トマス・アクィナスパリ大学 332

第6章 「この人物が知解する」――パリ大学における大論争 351

 1 急進派と保守派 351
 2 アリストテレス主義者としてのトマス・アクィナス 370
 3 断罪と復権 386

第7章 「オッカムの剃刀」――信仰と理性の分離 403

 1 終わりゆく中世 403
 2 「新しい道」へ 418
 3 オッカムの破門 432
 4 かくして寛容の門は閉ざされた 441

第8章 「もはや神が天球を動かす必要はない」――アリストテレスと現代の世界 455

 1 信仰と理性の緊張関係 455
 2 アリストテレス革命の忘却 472
 3 アリストテレスの遺産 487


謝辞 501
訳者あとがき 505
文庫版訳者あとがき 511
解説:「信仰」と「理性」の「紛争解決」[山本芳久] 513
註 [560-525]
参考文献 [574-562]
人名索引 [580-575]

『ムカシのミライ:プロセス考古学とポストプロセス考古学の対話』のある書評

阿子島香・溝口孝司(監修)

(2018年10月20日刊行,勁草書房,東京, vi+248 pp., 本体価格3,000円, ISBN:9784326248490目次版元ページ

第2考古学「阿子島・溝口2018『ムカシのミライ』 [全方位書評]」(2018年11月10日)※この書評記事では「「日本考古学」の忌避」が問題点の筆頭として挙げられている:

「より問題なのは、第1点の「日本考古学」の忌避である。
なぜなら、このコンテクスト(脈絡)で、このシチュエーション(状況)で、このメンツ(面子)で対談して、「日本考古学」という表現を避けて、まともな議論ができるはずがないからである。」

しかし,あの対談と本では「日本考古学の抱える問題点」は最初から “通奏低音” として響いていた.「日本考古学の抱える問題点」を当然の前提としてあの論文集は成立したと,寄稿者の一人であるワタクシは考えている.プロセス考古学とかポストプロセス考古学に対していま新たに「光」を当てる意義は,これまでの日本考古学の「影」をよりくっきり際立たせるためにほかならないでしょう.

この書評者は:

「どうも本イベントは、初発の問題構成に若干の、いやかなり本質的な問題が含まれていたようである。」

と指摘するが,ワタクシ個人としては,「総論忌避・各論執着」および「理論沈黙・個物偏愛」という日本のサイエンスの一般的特徴が「日本考古学」にもまったく支障なく当てはまることをあの対談で再確認できてとても心安らかになれた.

『辺境メシ:ヤバそうだから食べてみた』感想

高野秀行
(2018年10月25日刊行,文藝春秋,東京, 311 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784163909196版元ページ

読了.タイトル通り世界各地の “ヤバすぎる” 料理のオンパレード.雑誌連載をベースにした単行本なので,ひとつひとつのエッセイが短すぎる.カラー写真がもっとあってもよかったかも.同じ著者による前作:高野秀行謎のアジア納豆:そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2016年4月25日刊行,新潮社,東京, 8 color plates + 351 pp., 本体価格1,800円, ISBN:9784103400714目次版元ページ)は,ひたすら「納豆」にこだわったパワフルな一冊だった.こういうスタイルで “ヤバい料理” をさらに深く掘り下げてもらうと読みでがあっただろう.

『辺境メシ:ヤバそうだから食べてみた』

高野秀行
(2018年10月25日刊行,文藝春秋,東京, 311 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784163909196版元ページ

世界各地での食文化突撃レポート.巻頭カラーページをめくるだけでもうすでにヤバそうかも.熊本で “危険ライン” 超えのカタツムリ生食の経験談が載っているが良い子はけっしてマネをしてはいけません.Togetter -「ふざけて生のナメクジ食べた男性 420日間昏睡 その後も重い麻痺が残り 8年後の今月2日に死亡」みたいになったら困るでしょ.

『書物のある風景:美術で辿る本と人との物語』

ディヴィッド・トリッグ[赤尾秀子訳]
(2018年10月20日刊行,創元社,大阪, 351 pp., 本体価格4,200円, ISBN:9784422701165版元ページ

「本を読む人」が描かれた古今東西の絵を蒐めた本.真っ黒な本体の上端タイトル部分だけが見えるカバージャケット(極太オビ?)にさらに細いオビが重ね巻きされた独特の装幀.五年前に同じ創元社から出た「本を読む人」の写真集:アンドレ・ケルテス[渡辺滋人訳]『読む時間』(2013年11月20日刊行,創元社,大阪,76 pp., 本体価格2,200円, ISBN:9784422700601版元ページ)とそっくりなので,これはもう並べるしかないな.