Sergius G. Kiriakoff
(1948年刊行,Paleis der Academiën[Verhandelingen van de Koninklijke Vlaamse Academie voor Wetenschappen, Letteren en Schone Kunsten van België, Klassen der Wetenschappen, Vol. 10, No. 27], Brussel, 50 pp.)
ベルギー王立フラマン科学・文学・芸術アカデミーの紀要としてブリュッセルで出版されたフラマン語の生物体系学本.ベルギーのフラマン語圏では,第二次世界大戦直後のこの時期に出版された動物分類学の本はほとんどないので,その意味でも関心がある.ざっと眺めた感じでは,1940年代の“The New Systematics”の運動への応答(たとえば「種= soort」をめぐる分類カテゴリーの定義問題)が後半の中心テーマだが,前半ではむしろ「理論分類学(theoretische taxonomie)」をどのように構築していくのかという点に論議の中心がある.Ernst Mayr や George G. Simpson が taxonomy と systematics とをほとんど同義に解釈していたことを指摘しつつ,著者はこう述べる:
Met Paramonov (zie hierboven) beschouw ik de Taxonomie als een onderdeel van de Systematiek; deze laatste mag dus gedefiniëerd worden als de wetenschap van de rangschikking der lebende (recent en fossiel) vormen. De Taxonomie bepaal ik als de wetenschap van de kategorieën waarin deze vormen kunnen gerangschikt worden. De Klassifikatie, een onderdeel van de Systematiek, bepaalt in werke orde deze kategorieën moeten gerangschikt worden. [p.8]
【試訳】上で言及したParamonovと同じく,私も分類学(Taxonomie)は体系学(Systematiek)の下位にある学問とみなしている.ここでいう体系学とは現生および化石の生物(lebenden vormen)の整理(rangschikking)の科学であると定義できるだろう.分類学とは生物を整理するためのカテゴリーに関する科学である.そして,体系学のもう一つの下位科学である分類(Klassifikatie)は,それらのカテゴリーが整理される秩序に関する科学である.
生物を整理するためのカテゴリーが「分類学」であり,そのカテゴリーを整理するための秩序が「分類」の任務であるという所掌分担を想定し,それらを下位科学として包括する上位科学が「体系学」であると考えているようだ.1950年に Willi Hennig が登場する“前夜”は一般にこういう論調だったのか.Walter Zimmermann への言及もないので,「系統学」に対する視座はこの時点ではまだなかったのかもしれない.1950〜60年代の Kiriakoff はその意味では“豹変した”といえるだろう.
—— 横道ながら,届いたこの本はブリュッセル自由大学(Vrije Universiteit Brussel)の図書館から蔵書処分(afgevoerd)された本であることを示すスタンプが押されている.大戦直後の紙不足の時代だったから,きっと印刷部数は多くなかったと推測される(Hennig の1950年本もドイツ国内の紙不足のせいで出版が数年遅れたとのことだ).めぐりめぐってよくまあ極東の地まで到達したものだとつくづく思う.