ハインツ・ホライス/矢沢潔/三中信宏/河田雅圭/長野敬
(2012年1月10日刊行,技術評論社[知りたいサイエンス105],東京,245 pp., 本体価格1,580円,ISBN:9784774149073 → 版元ページ)
矢沢サイエンスオフィスが本書全体の編集を担当した.書店に配本されるのは12月9日以降とのことなので,すでに大手書店の店頭には並んでいることだろう.研究室に届いていた見本刷りをざっと読了.“異端”な進化学説に対する評価が甘々なのはたいへん気になる.それに「ジェイ・グールド」というオランダ系人名みたいな表記はしないだろう.しかし,全体的に見るかぎり,現代進化学の置かれている状況を概観する上ではもしかして役に立つかもしれない.ワタクシの担当した章では「進化的総合マンダラ」(pp. 118-121)を描いたのでぜひ見てくださいくださいください(ひつこい).なお,そのマンダラの中で「ガレス・ネルソン(植物学者)」と書かれているが,正しくは「ガレス・ネルソン(魚類学者)」ね.ゲラで修正しそこなったのかな.
【目次】
進化論マップ(折り込み)
はじめに[矢沢潔] 8
第1章 ラマルキズム(ラマルクの進化論)
最初の科学的進化論・誕生と顛末[ハインツ・ホライス/田中智行訳] 13
第2章 ダーウィニズム(ダーウィン進化論)
ダーウィンの自然選択への道程[矢沢潔] 37
第3章 ダーウィニズム異見
ダーウィニズムに対置するユニーク理論[矢沢サイエンスオフィス] 83
1. 有望な怪物説:将来有望な新しい種が突然現れる 85
2. 反復説と社会ダーウィニズム:個体発生は系統発生をくり返す 90
3. ルイセンコ学説:政治思想に隷属した遺伝科学 94
4. 今西進化論:生物は“棲み分け”を経て進化する 99
第4章 現代的総合説はいまどこにいるか?
ダーウィニズムは黄昏から再興へ[三中信宏] 105
第5章 ジェイ・グールドの断続平衡説
機が熟したとき,いっきに進化が起こる[ハインツ・ホライス/田中智行訳] 127
第6章 ドーキンズの利己的遺伝子
「利己的遺伝子」は進化を説明する上で重要か[河田雅圭] 145
第7章 マーギュリスの細胞共生説
生物は「共生」によって進化する[長野敬] 167
第8章 進化論を数学で支える2つの理論
1. 進化ゲーム理論:生物の「表現型」はゲームの産物[矢沢サイエンスオフィス] 192
2. 分子進化の中立説:突然変異は有利でも不利でもない[矢沢サイエンスオフィス] 200
補遺 「エピジェネティクス」の新世界
ラマルキズムの現代的復活[ハインツ・ホライス/田中智行訳] 208
第9章 言い遅れた最終章
ダーウィニズムは21世紀の進化科学へ[長野敬] 221
進化生物学の構造 [241-240]
おもな参考資料 [244-242]
著者・翻訳者紹介 [245]