『東京ブギウギと鈴木大拙』

山田奨治

(2015年4月22日刊行, 人文書院, 京都, 249 pp., 本体価格2,300円, ISBN:9784409410813版元ページ

できの悪い息子とその父親の物語.個人的には第5章がとてもおもしろかった.鈴木大拙の禅の思想は国境を越え,1950年代アメリカを特徴づける「ビート世代」に大きな影響を及ぼしたという.ビート世代の先駆となった超絶主義者ヘンリー・ディヴィッド・ソローが禅など東洋思想のシンパだったことは初耳.ジョン・ケージの作品〈4' 33"〉が禅宗を踏まえて作曲され,ケージ自身,滞米中の鈴木大拙の講義を彼が受けたことがあるというのも意外な事実.ビート世代の旗頭だったジャック・ケルアックの代表作『路上』のインフォグラフィックスはマニュエル・リマの『THE BOOK OF TREES』にも登場していた.本書『東京ブギウギと鈴木大拙』の主人公はあくまでもオモテに出せない “不肖の息子” 鈴木勝(アラン)なのだろうが,ワタクシ的には,けっして隅に置けない父・大拙の “行状” の方がはるかに興味深かった.その “年齢差” はいったいなんやねん!いう感じで(笑).鈴木大拙か,エルンスト・ヘッケルか.なかなかええ勝負やなあ.『東京ブギウギと鈴木大拙』にひとつ注文をつけるとしたら,それは「索引」を付けてほしかったという点です.

【目次】
序章 11
第1章 出生の秘密 19
第2章 不良少年 51
第3章 秀才の片りん 79
第4章 東京ブギウギ 121
第5章 大拙とビート世代 151
第6章 不肖の息子 205
あとがき 237


参考文献 241
関連年表 249