『送別の餃子:中国・都市と農村肖像画』感想

井口淳子
(2021年10月30日刊行,灯光舎,京都, xii+210 pp., 本体価格1,800円, ISBN:978-4-909992-01-7目次版元ドットコム

年をまたいで読了.中国の民族音楽と地方芸能を研究テーマとする著者が,中国本土でのフィールドワークを通じてつながった現地の人々との交遊録.心温まる話もそうではない話も.かつての「文化大革命」がもたらした結果はさまざまな形で現在の中国につながっている.著者が関わりをもった人々の人生が “文革” による「下放」により,直接的あるいは間接的な影響をもたらしたことがわかる.日本で得る情報だけではうかがいしれない中国の “姿” を垣間見ることができる.それにしても,著者は行く先々で病に伏したという挿話がたびたび出てくるのだが,フィールドワーカーならではの災厄なのだろうか.また,本書では著者による本文テクストとともに,佐々木優の挿画イラストが独自のメッセージを読者に発している.最近ワタクシが読んだ中国・台湾本はいずれも本文とイラストの混ざり具合が心地よい.たとえば:焦桐『味の台湾』とか崔岱遠・李楊樺『中国くいしんぼう辞典』とか.