牟田都子
(2022年8月30日刊行,亜紀書房,東京, 255 pp., 本体価格1,600円, ISBN:978-4-7505-1754-4 → 目次|版元ページ)
読了.著者が経験してきた校正逸話がおもしろい.ゲラを手にしたプロの “校正者” のきびしい世界は,ワタクシのようなアマチュアの “蟲捕りお花畑” とはぜんぜんちがう気がする.
本書『文にあたる』は,ジャンル的には職業としての proofreading の実像を描いた:メアリ・ノリス[有好宏文訳]『カンマの女王:「ニューヨーカー」校正係のここだけの話』(2021年1月10日刊行,柏書房,東京, 本体価格2,000円, ISBN: 978-4-7601-5259-9 → 版元ページ)や大西寿男『校正のこころ 増補改訂第二版:積極的受け身のすすめ』(2021年5月20日刊行,創元社,大阪, 254 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-422-93219-4 → 目次|版元ページ)に近い.
本書では,短いエピソードの積み重なりを通じて,校正者としての姿勢あるいは人生が語られる.ゲラのミスは “拾って” 当然で, “落とせば” 零点というのはコワすぎる.ワタクシがゲラ読みで “蟲捕り” を楽しんでいる(?)のとはまったくの別世界だ.「重版時に訂正する」は確かに免罪符ではない.
本書第2部「常に失敗している仕事」に「人の誤植は拾わない」というエッセイがある.ワタクシだったら,このタイトルは「他人【ひと】」というルビ付きにしそうだが,そんないたずらは即座に黒鉛筆でブスっと刺されるんでしょうねえ.この本には索引が巻末にあった方がよさそうな気がした.
—— 『文にあたる』はこの夏に読むべき1冊.ぜひどーぞ.