『アマゾン源流生活』

高野潤

(2006年1月11日刊行,平凡社ISBN:4582832970



【書評】

これはスゴイ本だ.著者が探訪した“源流域”というのは文字通りのアマゾンの深奥部でアンデスの直下にあたる.カヌー行の冒険譚が続々.とてもおもしろい.いかにも“アマゾン”な写真の数々も楽しめる.歩き読みに最適.それにしても,よく彼の地から生還できたなと思う.著者は,ひたすらカヌー(「カノア」)でアマゾンを行き来し,あるときは文字どおり「釣りバカ日誌」の主人公になりきったり(奇しくも連載とシンクロしているぞ),あるときはマラリアやリーシュマニアなど兇悪パラサイトたちに遭遇したり(のどに刺さった魚の骨が首から出てくる“奇跡”とか),またあるときはアウトドア料理に耽ったり,そしてまた川筋沿いに追いかけてくるプチ暴風雨(「ベンタロン」)の体験記など,読者を飽きさせない.ガイドとして雇っている現地人の indigenous system of knowledge のすごさは特筆されるべきだろう.マラリアの発作をイッパツで完治させる薬草があったとはねえ.動物を引き寄せる鳴き真似(「レメダル」)の熟練技もすごい.湿気や匂いまでも伝わってきそうで,確かに“生活感”のあふれる紀行文になっている.