『世界を読み解く一冊の本』

松田隆美・徳永聡子(編)

(2014年10月10日刊行予定,慶應義塾大学出版会[平成25年度極東証券寄付講座〈文献学の世界〉],東京, ISBN:9784766421811版元ページ

昨年,三田キャンパスで文学部の学部生を相手に講義した内容をもとにしてつくられた論集.本書は,この市販バージョンと同時に,同タイトルの非売品バージョン(2014年10月10日刊行予定,慶應義塾大学文学部[平成24年極東証券寄付講座〈文献学の世界〉],東京,非売品)も出版される.

以前,編者の一人である松田隆美さんから聞いた話では,このシリーズ〈文献学の世界〉はもともと寄附講座報告書として出版されるもので,一般販売は重視していないとのこと.昨年出た:松田隆美(編)『書物の来歴、読者の役割』(2013年9月30日刊行,慶應義塾大学出版会[平成24年極東証券寄付講座〈文献学の世界〉],東京,1 color plate+vi+193+69+2 pp.,本体価格3,000円, ISBN:9784766420913版元ページ)は,市販分はたった400部しか刷らなかったらしく,即座に売り切れたらしい(重版なし).今回の新刊もおそらくそれに準じる部数だろう.

ワタクシも本論集に寄稿した:三中信宏「生物・言語・写本:系統推定論の歴史とその普遍性について」(再校ゲラだと pp. 218-237).他の執筆者陣は,全員が中世文学や文学史の専門家なので,ワタクシだけひとり浮きまくっている.ワタクシの章では,Karl Lachmann - Paul Maas による写本の分岐分析法の解説とともに,あまり光が当たらない Walter Wilson Greg の公理論的方法に基づく比較文献学について生物体系学との関連を論じた.