『The Monkey's Voyage: How Improbable Journeys Shaped the History of Life』(短評)

Alan de Queiroz

(2014年1月7日刊行,Basic Books, New York, viii+360 pp., ISBN:9780465020515 [hbk] → 目次版元ページ特設ページ

生物の遺伝子あるいはゲノムの情報は,それまでは断片的にすら情報が得られなかった系統関係と地理的分布に関する知見により,1990年代以降の生物進化学と生物地理学に大きな変革をもたらした.本書はさまざまな具体例を通じて,生物の地理的分布域が変遷する進化的メカニズムを分子データに基づいて描く.長距離分散移動の仮説を支持する著者は過去の歴史的生物地理学の見解を一蹴し,新たな生物地理学の到来を予言している.その壮大な物語は読者に強いインパクトをもたらすだろう.その一方で,生物地理学の歴史叙述として見るならば,本書の視点はあまりにも偏っていて,ワタクシはまったく支持しない.