『藤田嗣治:手紙の森へ』

林洋子

(2018年1月22日刊行,集英社集英社新書ヴィジュアル版 044-V],東京,206 pp.,ISBN:9784087210187目次版元ページ

民俗学者柳田国男が家族に宛てた書簡集:田中正明(編)『柳田國男の絵葉書:家族に当てた二七〇通』(2005年6月25日刊行,晶文社,東京, 331 pp., 本体価格4,800円, ISBN:4794966547書評)では国内外の既製品の絵葉書が使われていた.一方,本書にまとめられている画家・藤田嗣治の彩色絵手紙は文章だけでなく絵も本人が手がけていて,さながら画文集のような雰囲気を漂わせている.文字起こしされた文章とそれが埋め込まれている絵を交互に眺めるのは心地よい読書体験だった.全編にわたってカラー図版とモノクロ写真が散りばめられているが,ワタクシ的には「第七信 フランク・シャーマンへの手紙 —— GHQ民政官との交流」のことのほかヴィジュアルな一連の絵手紙が強く印象に残った.絵は口ほどにものを言う.