「ゴールデンウィーク「こころがなごむ本」<1>」

土を喰ふ日々:わが精進十二ヶ月
水上勉
(1978年12月17日刊行,文化出版局,269 pp.,ISBNなし/1982年8月刊行,新潮社[新潮文庫],235 pp., ISBN:4101141150

読売新聞「ゴールデンウィーク「こころがなごむ本」<1>」(2020年4月23日(日)掲載|2020年5月3日公開)で,ワタクシは本書を選んだ.



還暦を過ぎてから評者は朝に夕に料理を手がけることがさらに多くなったが、はたち過ぎに千駄木の下宿の狭い炊事場でひとり料理をつくり始めたのがすべての始まりだった。その頃たまたま買った精進料理本が社会派作家・水上勉の手になる本書だ。京都の等持院で彼は“隠侍”として修行を積み、“典座”の教えに従い、精進料理の基本を叩き込まれた。軽井沢の地に出回る旬の地野菜を使った精進料理レシピの数々を味わい深い写真とともにゆっくり読んでじっくり味わえば、誰しも厨房に立ちたくなるだろう。評者ももっと精進しないと。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年4月23日(日)掲載|2020年5月3日公開)