本書『Phylogenetic Analysis of Morphological Data』は上下巻合わせて600ページに達する.「TNT」の使用マニュアルとしてももちろん使えるが,ゲノムデータ主流の現代にあって,形態データ分析にはどのような意義があるのかを考え直すいい機会になるとワタクシは考える.形態形質の確率進化モデルに関する議論も含まれていて,もちろん最尤法やベイズ法も俎上に乗っている.
また,少なくともワタクシ的には,この本は分岐学派のあるスクールの “集大成” をまとめた本でもあるので,「ロック・ファミリー・ツリー」ならぬ「クラディスト・ファミリー・ツリー」を念頭に置いて読む愉しみもある.だって,全600ページのいたるところに “Steve” が見え隠れしているでしょ.
Willi Hennig Society 会員たちは “神棚” にお供えして日々拝むといつか御利益があるかも(しらんけど).ただし,Pablo が “counterculture” と評する反対者たちにとってはまちがいなく忌避されるだろう.書評が出るのが今から楽しみだ.