『麻布学園図書館だより』(No. 50)

麻布学園図書館部(編)

(2008年2月13日発行 → pdf:1.64M)



たまたま見つけた麻布学園学校図書館のサイトで,麻布学園図書館部編の「麻布学園図書館だより」というニュースがオンライン公開されていることを知った.

その最新号(No. 50:2008年2月13日発行)は,「〈特集〉新書」と銘打たれている(→ pdf:1.64MB).50ページもある特集だ.「新書」という形態の本について,麻布の校長先生を含む先生方がそれぞれの教科ごとに寄稿し,さらに後半では十数ページにわたって,麻布中高生がどのように新書を読んでいるかのアンケート調査の結果が示されている.一読して損はない.

教師の世代と生徒の世代では「新書」に何を求めているかがちがっているのは当然だろう.「文庫以上,単行本未満」と位置づけあり,「玉石混淆,読み捨て御免」という声あり.いずれも部分的に当たっていると思う.とくに,いろいろな出版社が新規に「新書市場」に参入してきた近年の出版状況では,かつての「新書」のイメージが変わりつつあることは確かだろう.

そのアンケート結果の中で,ある生徒のつぶやきが目に留まった:「本当にどうでもいいことですが、講談社現代新書の装丁が単一色として統一されたことは残念でなりません。イラストあっての現代新書だとおもっていたのに…」(p. 35).現代新書のカバージャケットの装丁が,かつての杉浦康平デザインから変更されたのはほんの数年前のことだ.まだ高校生なのに,それに気がつくとは(しかも的確なコメントをするとは)さすがですなあ.この点については読書界での論議がいまだに続いているようだし(そのほとんどが否定的だが).

現代新書からすでに『系統樹思考の世界』を出しているワタシは,もちろん中立的な立場ではないのだが,自分の本についていえば,カバージャケットの“オモテ面”が深緑色でモノトーンになったことはあまり気にならない.というか,あのテーマの本で杉浦康平イラストが入っていたとしたら,それは“ものすごい”ことになることは十分に予想できるので,むしろいまの中島デザインのシンプルさの方がより好ましいかもしれない.

とはいえ,ぼくが自分の新書を持ち歩くときには,必ずカバージャケットを“裏返し”にして,アヤシイ絵の方を見せるようにしている.現代新書の装丁が変わってから,“ウラ面”がつまらなくなったと思いこんでいる人がまだ多いのは意外だが,実はコッソリと遊びが入っていたりする.そういうことが可能なのは,著者と編集者と装丁者の協力があってのことだ.

本の装丁を論議するときには「著者」側の立場からの発言はあまりないようだが,読み手とはまたちがう意見がきっとあると思う.では,ひとりの読み手として現代新書の「棚」に近づきたいかと言われれば,答えは「ノー」だ.だって,タイトルの“視認性”が悪過ぎる(配色にもよるが).ホワイト地に統一されたとしても,「背」文字の太いゴシック体が刺激的過ぎていただけない.ずらりと並ぶと目が痛くなる.

—— やっかいな問題ですなあ.しかし,書き手としては「中身で勝負してます」と言うしかない.それ以外は何とぞよろしく,と.