以前は Alibris でも探していたのだが,最近は洋書の古書は,もっぱら AbeBooks で買うようになった.今日もぶらぶら散策していたら,Ryuichi Matsuda『Morphology and Evolution of the Insect Abdomen』 (1976, Pergamon Press, Oxford) に「US$ 1380」というとんでもない値札が付けられていた.それがあっという間に sold out になったのにさらに驚愕.確かに,いまでは稀覯本といえる昆虫形態学本だから,いくら高くても買う人は買うのだろう.それにしても松田本と同じ叢書(International Series of Monographs in Pure and Applied Biology. Division: Zoology)に入っている:Donald Thomas Anderson『Embryology and Phylogeny in Annelids and Arthropods』 (1973) がたった「US$ 1.50」だったり,A. G. Sharov『Basic Arthropodan Stock with Special Reference to Insects』 (1966)が「US$ 2.72」という“バナナのたたき売り”みたいな価格設定になっているのを見ると,この雲泥の価格差はいったいどうしたことかと思う.
しかし,上には上がある.Willi Hennig『Grundzüge einer Theorie der phylogenetischen Systematik』(1950, Deutscher Zentralverlag, Berlin) にいたっては「US$ 3266.07」というアンビリーバブルな高値に跳ね上がっていた.この本のスペイン語訳『Elementos de una sistemática filogenética 』(1968) の書影をブラジルのオンライン古書店で初めて見たが,現物は手にする機会がぜんぜんない.有名な『Phylogenetic Systematics』 (1966, University of Illinois Press) は何度も復刻されていて安価に流通しているのに,そのドイツ語原本にあたる『Phylogenetische Systematik』(1982, Verlag Paul Parey) は古書でもほとんど見かけたことがない(AbeBooks に出されていた一冊は「US$ 92.38」だからまあまあの値段だろう).
植物学者 Agnes Arber『The Natural Philosophy of Plant Form』(1950, Cambridge University Press) も稀覯本で古書価は高い.国内の大学・研究機関にもあまり所蔵されていない.植物形態学者が,ゲーテ以来,繰り返し「自然哲学化」しがちなのはどうしてだろうか?(動物形態学者もその傾向はあるが).形態学というものが本来もっている学問的属性か.偶然にも,今月,同出版局の叢書〈Cambridge Library Collection - Life Sciences〉からペーパーバックとして復刻されることを知った.しかし,すでに入手した Francis Galton 伝記の復刻を見るかぎり,本文はともかく,図版のデジタル複製がイマイチな感じがする.円高の今こそ元本をえいやっと買ってしまおうか.
—— 蒐書慾が暗く渦巻くオンライン書店.今日もつい「ポチッ!」とご購入ボタンを押してしまうところが意思の弱い人間の証かも…….