『先生とわたし』

四方田犬彦

(2007年6月20日刊行,新潮社,238 pp.,ISBN:9784103671060版元ページ

ついついこの「伝記小説」を読んでしまった…….脱領域・脱構築そして“ニュー・アカデミズム”が存命したころのコマバの昔話.由良君美四方田犬彦のパーソナルな師弟関係の記述は,もはや余人には立ち入ることのできない世界なので,語られるまま聞くしかない.もちろん,その「場」を共有した他者の意見を併置すれば検証は可能だ.たとえば:小林龍生の怠惰な日々「由良君美と四方田犬彦」(2007年2月11日)を挙げておく.



—— 設問:「〈自分語り〉における四方田犬彦原武史の共通点について論じよ」



ということで,やっと由良君美みみずく偏書記』(2012年5月10日刊行,筑摩書房ちくま文庫ゆ-4-1],東京,361 pp., 本体価格1,100円, ISBN:9784480429452版元ページ)を手にできた.これだけの読書家にして英文学者が生涯に唯一度しか(それも後半生に)“洋行”したことがなかったというのはちょっと信じられない.そういう時代があったということか.確かに,いまのように研究者が若いうちから自由に海外に研究の場を求めていけるようになったのは“比較的最近”であることはわかってはいるのだが.