「新書ブーム余波 教養書の仕切り直し? 「選書」相次ぐ創刊 岩波も」

MSN産経ニュース(2013年6月24日)

 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/130624/bks13062407430000-n1.htm

「選書創刊が相次いでいるのは、新書戦争で崩壊した教養書の仕切り直し」.新書を何冊か出した書き手の立場から言えば,「新書」として書いたのではなく,出版媒体の形式がたまたま「新書」だったというだけのこと.400字詰めで400枚以上,文献リストと索引をつけるお作法を守っている.産経の記事には「手軽な雑学本と、難解な学術本の間」と書かれていた.しかし,新書は “分散” がとても大きい印刷媒体になったので,「新書とは」という論議は生産的ではない.少なくともワタクシの新書は「手軽」でもなければ「雑学」でもない(はず). “流動食” だと思ってやってきた読者は手痛い目に遭う運命が待っている.

ばらつきの大きな新書という媒体形式のマイナス面はいろいろ挙げられるだろうけど価格的なコスパは高く評価していいのではないか.たとえばワタクシの『系統樹思考の世界』とか『分類思考の世界』を大学出版会からハードカバー版で出したら3,000円は軽く越えるだろう.新書では図版やグラフなど “パラテクスト” の扱いがどうしてもイマイチなのは価格を考えればしかたないかもしれない.選書は価格に関しては新書と専門書の中間だろう.中身については,あんまり “軽い” のはどの出版社も選書にはしないだろうから,平均はやや上昇,分散は有意に小さくなるとふんでいる.