『精神医学の科学哲学』

レイチェル・クーパー[伊勢田哲治・村井俊哉監訳/植野仙経・中尾央・川島啓嗣・菅原裕輝訳]

(2015年6月20日刊行,名古屋大学出版会,名古屋,vi+279+31 pp., 本体価格4,600円,ISBN:9784815808075版元ページ

ご恵贈感謝.精神疾患の「分類」の問題とか「自然種」の話題とか認知心理的な「プロトタイプ理論」とか,ワタクシ的には十分すぎるほどヒット.それにしても,また名古屋大学出版会ですかっ.またですかっ.

【目次】


第1章 はじめに ―― 精神医学と科学哲学 1

 1 用語と概念について 2
 2 精神医学は科学だろうか?…… なんて、どうでもいいことだろうか? 7
 3 本書の概要 14

第2章 精神疾患の本性1 ―― 精神疾患は神話なのか? 16

 1 精神科医精神疾患がわかるのだろうか? 17
 2 精神疾患は歴史的に不安定なカテゴリーなのか? 20
 3 精神疾患は医学というより道徳の問題だろうか? 25
 4 精神疾患の症状は社会的文脈へあまりにも依存しすぎか? 29
 5 精神疾患を良いものとみなすことはできるか? 37
 6 まとめ 41

第3章 精神疾患の本性2 ―― 精神疾患が実在するのなら、それは何なのか? 43

 1 身体疾患と精神疾患との区別 43
 2 生物学的学説 46
 3 フルフォードの行為に基づく学説 52
 4 障害についてのアリストテレス的学説 54
 5 込み入った学説 59
 6 ロッシュ的概念としての障害 62
 7 まとめ 64

第4章 精神医学における説明1 ―― 自然誌に基づく説明 67

 1 自然種についての補足 72
 2 精神疾患は自然種であるという見解への反論 81
 3 精神疾患の類型は自然種なのか? 97
 4 帰結 99
 5 まとめ 101

第5章 精神医学における説明2 ―― 個別の個人誌 104

 1 素朴心理学的な理解についてのシミュレーション説 104
 2 シミュレーションと個人誌 107
 3 シミュレーションの限界 110
 4 伝統への回帰 ―― 他の説と比較したときの個人誌のシミュレーション説 125
 5 倫理と個人誌 127
 6 まとめ 128

第6章 理論と理論との関係1 ―― 異なるパラダイムが出会うとき 130

 1 パラダイムと通常科学についてのクーンの考え 131
 2 通約不可能性についてのクーンの考え 134
 3 精神医学におけるパラダイム 139
 4 クーンが論じなかったもう一つの問題 ―― 専門職間の競合関係 143
 5 十全なコミュニケーションをともなわない協働関係 147
 6 パラダイム間を横断する十全なコミュニケーションを目指して 151
 7 まとめ 160

第7章 理論と理論との関係2 ―― 還元主義 162

 1 三種類の還元主義 162
 2 心とは何か? 心についての理論は脳についての理論に還元できるか? 164
 3 方法論的還元主義 193
 4 まとめ 195

第8章 価値と利害関心の取り扱い1 ―― 価値負荷的な科学としての精神医学 197

 1 事例研究にあたって 199
 2 様々な価値負荷性 203
 3 他の科学との比較 213
 4 何ができるだろうか? 214
 5 まとめ 224

第9章 価値と利害関心の取り扱い2 ―― 大企業と治療の評価 225

 1 ランダム化比較試験 (RCT) について 226
 2 治療効果の評価にともなう問題 229
 3 精神医学における社会認識論と信頼の崩壊 240
 4 問題の診断 248
 5 精神医学に立ち返って 255
 6 まとめ 260

第10章 おわりに 263



謝辞 267
監訳者解説 269


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