「Q13:数学記号や分数などの書き順」

東京書籍:小学校「新しい算数」
 → https://www.tokyo-shoseki.co.jp/e-mail/qanda/q-es-math.htm#q13

「教科書では演算記号や等号,分数の書き順が示してありますが,それには何か基準があるのですか。また,それは必ず守らなければならないものですか」という質問に対して,次のように答えている:

以前は「確かでないことは教科書には載せない」との立場から,演算記号や分数の筆順など,明確な筆順が存在しないものについては教科書には載せておりませんでした。しかし,「児童に好きな筆順で書いてよいと指導すると,混乱が生じることもあるので,正式な筆順がないとしても,何らかの筆順を示して欲しい」との要望も多く,現在の教科書では,「+,−,×,÷」などの演算記号や等号,「%」の記号,分数などについても筆順を示すようにしました。

教育現場での「筆順強制」のリクツが漢字でも記号でもまったく同一なのが興味深い:「筆順の根拠はない」→「それでは生徒が混乱する」→「筆順を “決まりごと” として決める」→「だからちゃんと守れ」.生徒側の “混乱” はむしろ “多様性” を学ぶ契機になるという発想がまったくない.もうひとつ,たとえ論拠のない “決まりごと” でも強制してかまわないという悪しき実例を教師が示しているのは,低温やけどのように生徒に対してよくない刷り込みを長期にわたって続けることになるだろう.「学級経営」とか「授業計画」のような教育学の分野ではそういう “決まりごと” の発想が根強くあるのかもしれないが.

漢字の筆順については:松本仁志『筆順のはなし』(2012年11月10日刊行,中央公論新社中公新書ラクレ・435],東京,270 pp., ISBN:9784121504357目次版元ページ)を読んで目からウロコが何十枚も落ちた → 書評:三中信宏漢字筆順の自然的変異と教育的規範との二律背反」(2014年5月13日).