『比較史の方法』

マルク・ブロック[高橋清徳訳]
(2017年7月10日刊行,講談社講談社学術文庫・2437],東京, 130 pp., ISBN:9784062924375目次版元ページ

歴史言語学者アントワーヌ・メイエの「比較法」をよりどころとして,歴史学への比較法の適用可能性について考察した論考.よくまとまった良書だと思う.本文(pp. 7-66)からいくつかピックアップ:

  • 比較の方法について,この方法があまりにもしばしばうけてきたような誤解を抱かないように注意しよう.比較の方法は,類似点の探索以外の目的をもっていないあまりにもしばしば考えられているし,あるいはそう考えられる傾向がある.また,比較の方法は,無理なアナロジーで満足するとか,さらには,相異なる発展を示すものの間に,必要とあらば何やらわからぬが必要な対応関係を恣意的に措定することでアナロジーを発明さえする,などとよく非難される.(p. 30)
  • 反対に,比較の方法は——正しく理解された場合には——それが独自のものであれ,あるいは同一の出発点をもちながら異なる発展の道をたどった結果であれ,相違点の認識にはとくに積極的な関心をよせるものである.(p. 30)
  • 比較言語学が今日なすべき基本的な仕事の一つは,相異なる諸言語の独自の特徴を析出することだと思われる.しかしながら,比較言語の主たる努力は,はっきりと別の方向に,すなわち諸言語間の親縁関係と系統関係の確定,母語の探索に向けられている.

翻訳者による解説(pp. 67-121)もとてもくわしくて有用だ.