『本の景色』

潮田登久子
(2017年3月24日刊行,幻戯書房[Serie Bibliotheca 3/3],東京, 215 pp., 本体価格8,000円, ISBN:978-4-86488-118-0

読了(というか鑑賞終了).冒頭のぼろぼろになった日記帳のモノクロ写真は,巻末の説明によると島尾敏雄が妻に隠し続けた日記帳で,しかも「義母・島尾ミホの〜」とか,いきなり死の棘が刺さりまくり.この写真集は古今の本の写真集で,人物はほとんど不存在で,書物(とその痕跡)だけが主役を演じている.アンドレ・ケルテス[渡辺滋人訳]の写真集『読む時間』(2013年11月20日刊行,創元社,東京,76 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-422-70060-1版元ページ),あるいはアルベルト・マングェル[原田範行訳]『読書の歴史:あるいは読者の歴史』(1999年9月30日刊行,柏書房[叢書Laurus],東京, 354+38 pp., ISBN:4-7601-1806-3書評)から人の姿を消したような雰囲気.シバンムシやシロアリに食い尽くされた本の名残りが余韻を残す.頁をめくっていくと,使い込まれたGraham C. C. Griffithsの双翅目昆虫モノグラフがいきなり目に飛び込む(p.130).ワタクシの『系統体系学の世界』にも登場するクラディストだ.昆虫学者だった岡田豊日の旧宅図書室の蔵書を撮ったものだと知る.