『ホームレス博士:派遣村・ブラック企業化する大学院』

水月昭道

(2010年9月20日刊行,光文社[光文社新書479],東京,214 pp., ISBN:9784334035822版元ページ

第一部に関しては,この著者の前著『高学歴ワーキングプア』(→ 書評)を読んだときとまったく同じ感想を記すしかない.意図的なサンプリング・バイアス(たとえば最悪ケースからの一般化)と議論の基礎となるデータのまちがい(たとえば非常勤出講の収入金額など)が歴然としている.読者は本書のやたらジャーナリスティックな「煽り」に惑わされることなく,この「ポスドク問題」の深刻さについて理解をしていただきたい.第二部は一転して内省的(仏教的?)な諦観の境地を当事者に語りかけているようで,意外に読める.さらに最後の対談は本書ではもっとも価値があるかもしれない.

結論:「ホームレス博士」って言うな! アジテーションはもう聞き飽きた.