『草森紳一がいた。友人と仕事仲間たちによる回想集』

(2010年12月24日刊行,草森紳一回想集を作る会,東京,526 pp., 本体価格4,125円,ISBNなし)

昨年暮れに出版された本書の現物を千駄木往来堂書店の平積み台で手にとった.書店流通ルートに乗る「正規」の本ではない私家版で委託販売とのこと.しかも1000部しか印刷していないらしい.まるで電話帳みたいなボリュームがある.しかもおもしろすぎる.生涯独身で一度も結婚していないのに子どもが別々にふたりいたり,愛煙家にして麻雀狂だったり.破天荒といえば確かにそういう人生.彼もまた“竜巻き”みたいに周囲を巻き込みながら生涯を送ったということか.

草森紳一が三田で「中国文学」を専攻していたとはぜんぜん知らなかった.著者とワタクシとの唯一の接点(?)は,彼のけったいなタイトルの新書:草森紳一随筆 本が崩れる』(2005年10月20日刊行,文藝春秋[文春新書472],ISBN:4166604724書評版元ページ)しかなかったのだから無理もない.この分厚い回想集を読むと彼の最期はやはり本に埋れていたとのこと.むべなるかな.

なお,故人の膨大な蔵書を整理するプロジェクト〈崩れた本の山の中から:草森紳一蔵書整理プロジェクト〉とその後継サイト〈その先は永代橋:草森紳一をめぐるあれこれ〉がその経緯を記録している.また,蔵書の寄贈先のサイト〈白玉楼中の人:草森紳一記念館〉でも関連情報が公開されている.

世代はぜんぜんちがうけれども,草森紳一植草甚一って響き合うものがある気がする.サブカルチャー・ジャズ・麻雀・タバコなどなど共通のキーワードがたくさんありそう.