「大学「オープンラボ」普及へ 研究室、壁を外し交流を」

日本経済新聞(2014年8月12日)
 → http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14022_R10C14A8CR8000/

「お互いに研究の様子が目に触れるようにし、実験の進捗などについて自然と情報交換が行われる」― こういう愚案を農水省はけっしてマネしないように.大部屋だと相互に「交流」するのではなく,むしろ互いに「監視」しあうことになりかねない.全体作業を迅速に進める仕事にはいいシステムかもしれないが,研究の場にはむしろもっと “私的” な空間が必要だろう.

大学や研究機関には外界から遮断された「独房」のような独り部屋をたくさん用意してほしい.人が寄りつかない “奥の小部屋” とか,図書室の片隅の “キャレル” とか, “茶室” とか “離れ” とか.日がな一日,他人と「交流」しまくっていて肝心の仕事(=研究)ができるはずがない.他の仕事は捗るかもしれないけど,それはそれでえらいメイワクなこと.

そういう「独り場所」が確保しやすいのは図書館・図書室だと思っている.それもふだん人が近づかないような地下書庫の奥の閲覧机とか最適.集密書庫の暗がりで誰かが紙を食べていたりとか,腐食寸前の皮装丁本から紙魚が湧き出してきたりとかする環境.ところが,図書室・図書館は改築されるたびに変に「明るく健康的」になってしまって違和感がありまくり.ライブラリーはもっと暗くて湿ってカビ臭い不健康な場所であってほしい.