『昭和の翻訳出版事件簿』

宮田昇
(2017年8月10日刊行,創元社,大阪, 256 pp., 本体価格2,400円, ISBN:9784422930763目次版元ページ

第二次世界大戦の戦前から戦後にかけての日本の翻訳書と著作権との関わりを,さまざまな “事件” を通して読み取る.「無断翻訳伝説」「五十年フィクション」「十年留保」など,著作権に関わる契約や法律さらには敗戦国ならではの制約がこの時代の翻訳出版と複雑に絡み合っていたことが垣間見える.『くまのプーさん』,『ロリータ』,『シートン動物記』など現在もなお有名な翻訳本の時代背景がわかる.それにしてもオモテに出た “翻訳者” の名前と実際に翻訳に携わった “下訳者” との関係が興味深い.かつての「レンブラント工房」みたいな翻訳体制も見られたという.長年にわたって著作権・翻訳権のエージェンシーとして活躍した著者にして初めて書ける本だろう.