佐藤俊樹
(2019年1月29日刊行,岩波書店,東京, xx+407+10 pp., 本体価格2,800円, ISBN:9784000613156 → 版元ページ)
ひさしぶりに研究学園のイーアスへ.〈アカデミア書店〉の新刊コーナーはもうすでに見たものばかりだったので,奥の方の書棚でぶらぶら探書していたら,不意に佐藤俊樹『社会科学と因果分析』に呼び止められた.先週の読売新聞読書委員会で苅部直さんが本書を手にしながら「ウェーバーって統計学者だったんですよねぇ」とのつぶやきを聞き逃すはずもなく,第一ロックはすでに解除された.
アカデミア書店でブツを手に取ったら,確かにガウス分布曲線がカバージャケットにあしらわれていて “それっぽい” 雰囲気を漂わせている.統計的因果推論と関係があることは,ジューディア・パールとかイアン・ハッキングへの言及があることからもうかがえる.このとき第二ロックが解除された.
しかし,慎重この上ないワタクシは冷静に「購入はあとでよく考えてから」とそっとその場から立ち去ろうとしたら,いきなり著者にむんずと引き戻され,「これでも立ち去るつもりか」と見てはならない “現代社会学分岐図” を突きつけられた.ルーマンとパーソンズとウェーバーの “分岐関係” の推定ですかそうですか. “単系統群” が問題なんですかそうですか.この時点で最後の第三ロックも瞬時に解除されてしまい,即刻レジに連行することになった.
どーしてワタクシはよりによって佐藤俊樹の新刊を買うハメになったのだろうか…….
【目次】
[はしがき]この本の主題と構成,そして読み方案内 v第1章 社会科学とは何か 1
[第1回]社会科学は何をする? 2
[第1回]人文学と自然科学の間で 14
【コラム1】 ウェーバーの方法論の研究史 27第2章 百年の螺旋 55
[第3回]リッカートの文化科学――価値関係づけの円環 56
[第4回]機能主義と因果の推論――制度のしくみと意味 71
[第5回]システムと文化科学と二項コード――現代の座標系から 90第3章 適合的因果の方法 105
[第6回]歴史の一回性と因果――リッカートからフォン・クリースへ(1) 106
[第7回]適合的因果と反実仮想――リッカートからフォン・クリースへ(2) 119
[第8回]「法則論的/存在論的」――「客観的可能性」の考察(1) 141
[第9回]「事実」と知識――「客観的可能性」の考察(2) 153
[第10回]量子力学と経験論――「客観的可能性」の考察(3) 166
【コラム2】骰子の目の法則論〔ノモロジー〕と存在論〔オントロジー〕 184第4章 歴史と比較 201
[第11回]日常会話の可能世界――因果分析の方法論(1) 202
[第12回]歴史学者の思考実験――因果分析の方法論(2) 220
[第13回]自然の科学と社会の科学――経験的探究としての社会科学(1) 238
[第14回]比較社会学への展開――経験的探究としての社会科学(2) 255
【コラム3】一九世紀の統計学と社会学 271第5章 社会の観察と因果分析 281
[第15回]法則論的知識と因果推論 282
[第16回]社会科学と反事実的因果 300
[第17回]因果効果と比較研究 318
【コラム4】三月革命の適合的因果と期待値演算 340
[第18回]事例研究への意義 363
[第19回]ウェーバーの方法論の位置 379
[第20回]社会科学の現在 閉じることと開くこと 390あとがき 405
人名索引 [7-10]
事項索引 [1-7]