『読む・打つ・書く』書評拾い(21)

三中信宏
(2021年6月15日刊行,東京大学出版会東京大学出版会創立70周年記念出版],東京,xiv+349 pp., 本体価格2,800円(税込価格3,080円), ISBN:978-4-13-063376-5コンパニオン・サイト版元ページ

注文【ちゅうぶん】への注文【ちゅうもん】

東京大学出版会『UP』誌の最新号(2021年9月号)に須藤靖さんの長期連載〈注文【ちゅうぶん】の多い雑文〉の第55回が掲載されている:須藤靖 2021. 「ゥゥゥウウウーーーUFO! 注文の多い雑文 その五十五」, UP(2021年9月号), pp. 30-36.わざわざ「注が多い」と書かれているので,「ワタクシは想定読者ではないんだあ」といつもまたいで通り過ぎていた(すみません).今号もいつものように須藤エッセイを華麗にスルーしようとしたら,後注のひとつ —— 後注(12)「注の世界観」(p. 36)—— が「ちょっと待ったれやぁ」(高知弁でなくてすみません)と後ろから声を飛ばしてきた.「いやいや,ワタクシは何も失礼なことはしていませんのでお見逃しを」と逃げ腰で懇願したのだが,有無を言わさず読むことに.ワタクシ,本文はぜんぜん読んでません.この注だけ読んだんです.

 

須藤さんいわく:「とはいえ,これは世界観の違いなので,引き続きご容赦頂ければ幸いである.そもそも私のこの雑文には『読書の動線』などという概念は無縁ヤケンネ」(p. 36)とのこと.なるほどなるほど.ワタクシが『読む・打つ・書く』で「読書の動線」(pp. 69-70)について書いたとき,ワタクシの読書スタイルが “注マシマシ系” の文章とは相性がワルいことはわかっていた.「注なんか本文に丸ごと放り込め」という主義主張だからだ.多くの注文【ちゅうぶん】には多くの注文【ちゅうもん】をつけたくなる.これは確かに「agree to disagree」という言うしかない.

 

それはさておき —— この「注(12)」は本文中のどこにも「参照位置」が明示されていないようです.ワタクシはエッセイ全体を読んではいないのですが,これはひょっとして本文とは直接関係のない「独立系の注」あるいは「野生の注( “野良注” )」なんでしょうか.それはそれでワイルドな注の宇宙かもです.