『全国水平社1922–1942 —— 差別と解放の苦悩』感想

朝治武
(2022年2月10日刊行,筑摩書房ちくま新書・1631],東京, 314 pp., 本体価格940円, ISBN:978-4-480-07453-9目次版元ページ

部落解放運動の歴史をたどった本.全国水平社が1922年に創立されたのは京都だった.ワタクシの世代は高校までしっかり “同和教育” を受けてきた.全国水平社が創立当初に「徹底的糾弾」という運動方針を掲げたことは重要.ワタクシの母方の実家は,伏見区東境町(濠川のクランクがあるあたり)にあり,祖父は町内会のまとめ役を務めていたとき,近隣の部落民ともめごとがあったそうな.母親の記憶では1930年代初めのことだったそうで,水平社の “レヴェラー” たちが大勢実家に押しかけ,方針通りの「徹底的糾弾」をしたとのこと.当時まだ子どもだった母親は震え上がるくらい怖かったと後々まで語っていたことをワタクシは記憶している.同和問題はそれくらい身近なことだった.

実にグッドタイミングなことに,未解放部落問題の経済学的側面をモデルを使って解析した論文が公開された:Yamagishi, Atsushi and Yasuhiro Sato 2022. Measuring Discrimination in Spatial Equilibrium: 100 Years of Japan’s Invisible Race. Center for International Research on the Japanese Economy, The University of Tokyo, CIRJE-F-1188.