長尾宗典
(2023年4月25日刊行,中央公論新社[中公新書・2749],東京, xvi+283 pp., 本体価格920円, ISBN:978-4-12-102749-8 → 目次|版元ページ)
読了.明治時代に成立した文部省書籍館をルーツとする帝国図書館の歴史をたどる本.ワタクシ的には第二次世界大戦に向かう時代の帝国図書館の活動(第6章)がとても興味深かった.
帝国図書館は戦地の最前線に出征した兵士に慰問図書を送ったとの記述がある(p. 220).モリー・グプティル・マニング[松尾恭子訳]『戦地の図書館:海を越えた一億四千万冊』(2016年5月31日刊行,東京創元社,東京, 257 + lix pp., 本体価格2,500円, ISBN:978-4-488-00384-5 → 書評|目次|版元ページ)によると, “敵国” のアメリカは膨大な本を戦地に送ったとのこと.
また,日本軍は中国や東南アジアの占領地からおびただしい量の略奪本を帝国図書館に蓄積したとのこと(p. 227).ナチスによるヨーロッパでの本の略奪を描いた:アンデシュ・リデル[北條文緒・小林祐子訳]『ナチ 本の略奪』(2019年7月16日刊行,国書刊行会,東京, 431 pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-336-06321-2 → 書評|目次|版元ページ)を思い出した.
帝国図書館にもきっとまだ書かれていない歴史の “暗闇” があるのだろうと想像が膨らむ.