『欧文書体:その背景と使い方』

小林章

(2005年7月7日刊行,美術出版社,ISBN:4568502772



現役のフォント・デザイナーによる新刊.ぼくが予想していた以上にいい本で,一気に読了.こういう本をずっと待っていた.欧文組版の“伝統”と“常識”がそこかしこに読み取れて,たいへん勉強になる.とくに,カリグラフィーの素養がないと欧文フォントや組版の精神が理解・吸収できないだろうという指摘はなるほどと思った.奥の深い「文字」の世界にくらくらする.さまざまな欧文書体の特徴や目的に応じた選び方,そして使い分けの原則がとてもわかりやすく示されている.とりわけ第4章に書かれてある「スクリプト体の使いこなし」はすごすぎる.変にマネしたら痛い目に遭いそう.でも楽しそう.




【目次】
推薦の言葉(Hermann Zapf) 4
推薦の言葉(Adrian Frutiger) 6
第1章 文字のなりたち 9
 1-1 最初の一歩 11
 1-2 コンパスと定規ではローマ字はできない 12
 1-3 理屈で割り切れない世界 15
  コラム タイプ・ディレクターの眼 19
第2章 欧文書体を知る 21
 2-1 用語の解説 23
 2-2 フォントの中身 32
 2-3 頼りになる定番書体 39
 2-4 悪い書体は無いが,悪いフォントはある 48
 2-5 いろんなガラモン,いろんなカスロン 50
 2-6 恥をかかないための組版ルール 57
  コラム タイプ・ディレクターの眼 63
第3章 欧文書体の選び方 65
 3-1 時代を軸に選ぶ書体 67
 3-2 お国柄を軸に選ぶ書体 74
 3-3 雰囲気を軸に選ぶ書体 77
 3-4 フォント検索ツール活用術 79
第4章 欧文書体の楽しみ方 85
 4-1 ひとクラス上の使い方 87
 4-2 スクリプト体を使いこなす 94
 4-3 作り手と使い手のスペーシングの微調整 97
 4-4 書体を活かす使い方 105
 4-5 文字でない書体:パイフォントと飾り罫 112
  コラム タイプ・ディレクターの眼 115
第5章 欧文書体の作り手から 117
 5-1 名作をさらに良くする 119
 5-2 タイプ・ディレクターの思うこと 126
 5-3 私の書体の紹介 129
  コラム タイプ・ディレクターの眼 137
第6章 これから学ぼうとする方に 139
 6-1 日本人が欧文書体のデザイン? 141
 6-2 コンファレンスに出かけよう 144
 6-3 欧文書体を作ろう 146
あとがき:読者のためのタイポグラフィ 148
参考文献 150
書体索引 154
人名・社名索引 156
用語索引 158