『Philosophy, Biology and Life』

Anthony O'Hear (ed.)

(2006年1月刊行予定,Cambridge University Press, ISBN:0521678455



出版社ページには,「生物学哲学」と聞いて脳裏に浮かぶビッグネームたちが寄稿者にずらっと.〈Royal Institute of Philosophy Supplements〉という叢書の1冊.£ 15.99 なので,本としては高くはないね.

編者の「Anthony O'Hear」という名前を見るたびに,Popper 本:Anthony O'Hear『Karl Popper』(1980年刊行,Routledge & Kegan Paul,ISBN:0710003595)の著者という連想をついしてしまう.〈The Arguments of the Philosophers〉叢書の1冊として出版された本で,購入日付を見たら「1980年8月7日」となっていた.農学部修士1年の夏休みに読んだ形跡がある.ただし数十ページ読み進んだあげく,放り出してしまったようだ(未熟者め).

とくに記録をつけてきたわけではないので,自分の「読書史」は記憶の中にしかないのだが,学部生の頃から院生の初期の頃までは,まだ“書籍数”が少なかったので,読破した順序は今でもよく記憶している.研究室が同じだった渡辺政隆さんの紹介で,当時出入りしていた青木洋書から洋書を買うことが多かった.学部4年生のときに Willi Hennig 『Phylogenetic Systematics』の復刻版(1979)が出版されたのですぐに買ったものの,得体の知れないオーラに気圧されて,そのまま書棚で熟成させていた.

農学部修士に入ってすぐに読みはじめたのは,その後,蒼樹書房から翻訳されることになる Niles Eldredge and Joel Cracraft『Phylogenetic Patterns and the Evolutionary Process: Method and Theory in Comparative Biology』(1980)で,これはしっかり読んだ.そのあとでまた Hennig に舞い戻ったり(今度は踏破できた),Fred Bookstein 本『The Measurement of Biological Shape and Shape Change』(1978)にたまたま遭遇したりしつつ(その形態測定学が修士論文のネタになったのは幸いだった),Popper 本だけは日本語も英語も意識してそろえた(主著の翻訳がほぼ出そろった時期だった).“ポパー”とか“科学哲学”は,当時の Systematic Zoology 誌を読み進む上で最低限必要な「リテラシー」だったので.

研究者の「卵」の初期に遭遇した人や本がその後の進む道に影響を及ぼしているとしたら,ぼくの場合の解明は比較的ラクだろうと思う.ずっと農学部に在籍していたということもあり,自分の勉強の内容とか関心の対象に関しては周囲とはほとんど何の関わりもなかったから.