『The Science of Describing : Natural History in Renaissance Europe』

Brian W. Ogilvie

(2006年6月1日刊行, The University of Chicago Press, ISBN:0226620875 [hbk] → 詳細目次著者サイト版元ページ



先日,オアゾ丸善で見たときは8,000円を越える値段がついていたが,帰ってから amazon.com で確認したら,ディスカウントがついてほぼ半額で買うことができた.

本書は,リンネの直前にあたる16世紀ルネサンス期の博物学に関する歴史書だ.その基本スタンスに共感するのは,16世紀の博物学が,リンネが活動した17世紀とは異なり,「分類」ということに対する関心が意外なほど低かったことに対する著者の説明だ.著者は,16世紀のナチュラリストたちが直面した生物の多様性は認知心理学としての folktaxonomy が処理できる範囲にあったからだろうと推察する.つまり,16世紀のルネサンス博物学は,いかにして対象生物を正しく記載するか(「The science of describing」)に集中できたのは,分類そのものを Scott Atran のいう common sense に委ねることができたからだというのが著者の考えである.

16世紀は,ヒエロニムス・ボスやコンラート・ゲスナーナチュラリストたちがいたローカルな地域生物相に関する folktaxonomy で何とかやっていけた.しかし,探検博物学が興隆し,全世界から異国の生き物たちが届くようになった17世紀は,博物学的知識のグローバル化とともに folktaxonomy の限界が見えるようになった.「分類」や「体系」の理念とそのための実践的方法が論議されるようになった背景にはそのような理由がある —— 詳しくはもっと読んでからということで.