『一六世紀文化革命(1)』

山本義隆

(2007年4月16日刊行, みすず書房ISBN:9784622072867目次版元ページ



上巻の最後の第5章「商業数学と一六世紀数学革命」を読む.90ページほど.実用数学としての算術は,他の学問での“手仕事”がそうであったように,16世紀当時は社会的に一段低く見られた知識体系だったそうだ.たとえば,ルカ・パチョリによる『算術大全』は,社会的階層が必ずしも高くない著者がまとめた実用数学の体系書だったとのこと.また,高次方程式の解法をめぐるタルターリアやカルダーノを巻き込んだデュエルあるいは泥仕合もまた,考えようによっては,そのような“算術”が当時のヨーロッパ社会の中で占めていた文化的位置を示唆するものなのだろう.ネーデルラントのシモン・ステヴィンがこの文脈で取り上げられるのは当然のことだろう.

—— これで上巻はおしまい.