『歳月の鉛』

四方田犬彦

(2009年5月20日刊行,工作舎,東京,342 pp.,本体価格2,400円,ISBN:9784875024194目次版元ページ

【感想】

勢いで読了.前著:四方田犬彦ハイスクール1968』(2004年2月25日刊行,新潮社,255 pp.,ISBN:4103671041書評目次版元ページ新潮文庫])の後半部分の基調となる陰鬱な色合いがそのまま本書に引き継がれているようだ.たとえて言えば,ひたすらクラくてとても長いショスタコーヴィチの後期交響曲(10, 11, 12番あたり)をBGMで延々と流され続けている心地がする.

とくに,前半部分の内省的というか内向的な時期は,「ノオト」の内容もよくわからないし,対外的にも“闇”しか見えない.修士論文を書く過程で,著者を取り巻く内外の雰囲気がしだいに明るくなってきたようにみえるのが唯一の救いか.2年前に初台のICC鼎談したパネリストのひとりの名前を本書の意外な箇所で発見してびっくりした.

さて,四方田「日録」は本書のあと,さらに:四方田犬彦星とともに走る : 日誌1979-1997』(1999年2月20日刊行,七月社,東京,373 pp.,本体価格2,600円,ISBN:4879440191目次)へとつながっていくのだが,やや読み疲れたかもしれない.駒場の中での師弟関係をめぐっては:四方田犬彦先生とわたし』(2007年6月20日刊行,新潮社,238 pp.,ISBN:9784103671060目次版元ページ)も補間的なのだが,さらに疲れそうで…….ちょっとお休みをいただきたいなあ.