『働きすぎに斃れて:過労死・過労自殺の語る労働史』

熊沢誠

(2010年2月18日刊行,岩波書店,東京,xii+386 pp.,本体価格3,200円,ISBN:9784000244565版元ページ

読むべき本.個別事例の積み上げは事実のみがもつパワーがある.働き過ぎて死んだ本人よりもむしろ遺族が長期にわたって苦労するんだからね.勘違いしないよう.ルポルタージュ記録をもとに一工程の編集と解説をつけてあるのは,客観的に全体像を見渡せるという意味ではプラスだが,地べたの現実から離れたという点ではマイナスなのかも.こういう社会問題を論じるときの著者の立ち位置のあり方はたいへん難しいかもしれない.“野帳”のようでは可読性に欠けるし,編集しすぎると現実から離れてしまう.

本書のタネ本のひとつ:全国過労死を考える家族の会(編)『日本は幸せか — 過労死・残された五〇人の妻たちの手記』(1991年刊行,教育資料出版会 → 版元トップページ)は品切れのようだが基礎資料として大事らしい.