『選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義』

シーナ・アイエンガー[櫻井祐子訳]

(2010年11月15日刊行,文藝春秋,東京,380 pp.,ISBN:9784163733500版元ページ

時事通信社文化部からの書評依頼本.社会における個人の選択(choice)すなわち意志決定がどのような社会的・文化的・宗教的な文脈と制約のもとでなされているか,個人主義集団主義という選択スタイルの功罪は何か,選択をとりしきる主体は誰かなど,人生に直結するさまざまな「選択」のあり方について全世界的な比較の観点に立って論じた本.そのグローバルな視点はジャレド・ダイアモンドの著作,たとえば『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上・下)』に見られる比較地理学的論議を髣髴とさせる.また,ある選択が誰に対する利益なのかを考察する点では:E. Sober and D.S. Wilson『Unto Others : The Evolution and Psychology of Unselfish Behavior』の利他主義のテーマにも通じる.本書のようなしっかりした調査とデータに基づく議論はたいへん興味深い.

【目次】
オリエンテーション:私が「選択」を研究テーマにした理由 7
第1講:選択は本能である 15
第2講:集団のためか,個人のためか 43
第3講:「強制」された選択 107
第4講:選択を左右するもの 141
第5講:選択は創られる 173
第6講:豊富な選択肢は必ずしも利益にならない 217
第7講:選択の代償 263
最終講:選択と偶然と運命の三元連立方程式 313
謝辞 330
ソースノート 339
主要参考文献一覧 [1-14]
訳者あとがき 377