三中信宏
(2018年前半刊行予定,技術評論社,東京 → 経緯)
草稿は2016年8月には書き上がっていたのだが,その後,春秋社の『思考の体系学』の大波が年越しで押し寄せてきたので,改訂スケジュールが大幅に遅延してしまった.本日やっと原稿改訂作業を終えた.本文テキストは481,710 バイト(602.14枚/400字)+図版144枚.昨年の目次原案と比較すると,第10講以降はほとんど変わっていないが,第9章までは章を分けたり節を入れ替えたりとずいぶんと書き換えた.
今後追加されるのは「ブックガイド」「謝辞」「引用文献リスト」そして「索引」なので,きっと650枚は超えるだろう.内容的には,おととしの羊土社本『みなか先生といっしょに 統計学の王国を歩いてみよう』よりは,はるかに守備範囲が広くまた深い.ワタクシの統計高座をそのまま文字にしたような感じ.初校ゲラが出るのはまだ先のことなので,しばし,ゆっくらりんとゴールデンウィークを過ごしたいところだが,次の “大波” が水平線に見えてきたので油断禁物.
【目次(十訂案:2017年4月28日)】
プロローグ:統計曼荼羅の拝み方 ― 統計学の世界を鳥瞰するために
第1講 素朴統計学:涙なしの統計ユーザーへの道
統計学のロジックとフィーリング:ある思考実験
統計思考の認知心理的ルーツを探る
アブダクションという推論様式の進化的起源第2講 グラフィック統計学:数と図のリテラシー
統計学は「見る」ことから始まる
百聞は一見にしかず:グラフを用いた可視化の事例
ポアソン・クランピングの陥穽:統計的直感の “誤作動” の例として第3講 観察データから統計モデルへ
観察データと統計モデルとの関係
数学と現実の架け橋:カール・ピアソンの先駆的業績
統計学の誤解と誤用:農業試験研究の場合第4講 統計学をめぐる論争は今なおやまず
「p値」をめぐるせめぎあい ― ある統計学論争
統計的推論の目標は何か?:強い推論と弱い推論
フィッシャーを経由してネイマン-ピアソンへ
ネイマン-ピアソンを超えて:証拠に基づくアブダクション第5講 統計的思考に必要なリテラシー:文字・数字・図表
統計学をめぐるある生物分類論争
リテラシー,ニューメラシー,ヴィジュアル・リテラシー
知識の体系化と情報の可視化第6講 パラメトリック統計学:数理の世界
統計理論の要塞を見上げる
確率変数と確率分布:母集団のモデル化として
標本に基づく母集団パラメーターの推定
確率分布曼荼羅:確率分布の類縁関係を見わたす第7講 実験計画法(1):完全無作為化法への道
正規分布帝国:なぜ正規分布は最強なのか
実験計画法の理念と射程
実験区の配置と線形統計モデル
偏差,平方和,平均平方,そしてF値第8講 実験計画法(2):分散分析と多重比較
統計的検定の枠組み:帰無仮説と対立仮説
仮説検定と分散分析:要因の有意性を判定する
多重比較の諸方法:水準間の有意差を判定する第9講 実験計画法(3):乱塊法,要因実験,交互作用
実験区をブロック化する
要因実験:複数の実験要因の組合せと交互作用
分割区法:乱塊法の応用として第10講 線形統計モデルのさらなる拡張
線形モデル:その仮定と問題点
拡張(1):一般化線形モデル
拡張(2):混合効果モデル第11講 統計モデル選択論:統計学的アブダクションのために
パラメーター推定問題とモデル選択問題
データに対するモデルの当てはまり:尤度による評価
よい統計モデルとは何か?:AICによるモデル選択第12講 コンピューター統計学:データに自らを語らせる
母集団からのサンプリング vs. データからのリサンプリング
リサンプリング統計手法:ブーツストラップとジャックナイフ
[1]ジャックナイフ法:重複を許さず無作為削除リサンプリングを反復する
[2]ブーツストラップ法:重複を許して無作為同数リサンプリングを反復する
データははたしてものを言うのか:理想と現実第13講 ベイズの世界:論よりラン
ベイズの定理:条件付き確率からの出発
ベイズ的推論:事前から事後へ
事後確率分布=尤度×事前確率分布
[1]ベータ事前分布をもつ二項分布パラメーターの事後分布
[2]正規事前分布をもつ正規分布の平均パラメーターの事後分布
ベイジアンMCMC:福音か災厄か第14講 多変量解析の細道をたどる
変量間の共変動:その視覚化と定量化
一変量から二変量へ,そして多変量へ
高次元データの攻略に向けて
[1]グラフ化による可視化:クラスター分析の例
[2]次元削減による可視化:主成分分析の例