『ヴィジュアル・リーディング:西洋中世におけるテクストとパラテクスト』

松田隆美

(2010年8月10日刊行,ありな書房,東京,254 pp., 本体価格4,800円,ISBN:9784756610140版元ページ

経堂駅前すずらん通りの遠藤書店にてゲット.中世写本の挿画や文字飾りあるいは欄外注釈など,本文テクストを取り巻くさまざまな“パラテクスト”をどのように読むかを論じる.狭い意味での「テクスト」ともっと広い「コンテクスト」の中間に位置する存在としての“パラテクスト”の観点から読み解こうという姿勢.本文テキストに接しつつも“パラテクスト”は仄暗い独自の世界を創っている.一枚の図像を読むことでさえこれほどの奥深さがあるのならば,複数の図像から成る組み合わせを読み解き解釈する行為のはてしなさはいったいどう言えばいいのだろうか.

【目次】

序章 中世写本のイメージとテクスト 7

1 教会によるイメージの擁護
2 中世写本の挿絵の類型
3 コンピラティオとミセラニー性
4 西洋中世の書物生産と流通


第一章 時祷書のテクストとパラテクスト 39

1 書物としての時祷書
2 時祷書の利用の実際
3 時祷書の基本的構成
4 時祷書の制作と書籍工房
5 活版印刷による時祷書
6 時祷書の用途の多様化


第二章 時祷書の変容−典礼書から教訓書へ 95

1 周縁部のイメージ
2 予型論の物語絵シリーズ
3 暦の中世的宇宙
4 「人生における諸時期」
5 時祷書の暦と「人生の十二時期」


第三章 「羊飼いの暦」と中世的宇宙 149

1 羊飼いの知恵と心身の「健康」
2 「羊飼いの暦」と時祷書


第四章 「専門の読み手」とミセラニー写本 185

1 アマチュア絵師の仕事
2 北イングランドの宗教文学ミセラニー写本
3 解釈のユニットとしてのコンピラティオ


終章 中世の書物のポピュラリティ 215



註 220
主要参考文献 237
あとがき 247
人名/著作名 索引 [254-250]