廣田吉崇
(2015年3月30日刊行,大隅書店,大津, vi+216 pp., 本体価格4,000円, ISBN:9784905328100 → 版元ページ)
ご恵贈どうもありがとうございます.本書では,茶道の「お点前」の “行動形質” をコード化することにより,まずはじめに「対応分析(correspondence analysis)」による各流派の多変量解析,ならびに最節約法に基づく流派の文化系統推定を試みている.茶道の所作については分割された “行動形質” ひとつひとつについての「仮想祖先的お点前」の復元と,それを連続させたときの一連なりの「お点前システム」の復元という問題が残るだろう.形質状態変化の方向性については千利休を archetype とするかどうかも問題.ワタクシ的には,茶道流派の系統推定は写本系譜学の行動形質バージョンとみなしている.情報源が文字テキストとして残されているのではなく,一連の行動形質として伝承されてきたということ.たとえば社会性昆虫の行動形質に基づく系統推定法が使えるはず.
【目次】
序章 点前の研究の考え方 1
1 研究の前史 ― 千利休の点前を求めて 1
2 「茶の湯点前比較研究試論」の概要とその後の展開 3
3 流派による点前のちがいと変化 8
4 本書の構成 12第1章 調査対象流派および点前の分析方法 15
1 調査対象流派とその概要 15
2 点前の分析方法 19第2章 多変量解析による分析 27
1 多変量解析による44流派の分析 27
2 44流派のグラフ化による検討 28第3章 文化系統学による分析 35
1 現在から過去を推定する学問 35
2 文化系統学による44流派の分析 38第4章 調査対象項目ごとの検討 43
1 項目ごとの検討方法 43
2 点前全般についての項目(?〜?) 44
3 点前手順を細分化した項目(1〜33) 64第5章 点前の多様性をめぐる言説 113
1 『茶譜』および『茶道望月集』にみる点前の議論 113
2 【?】茶碗の仕込み方について 115
3 【?】帛紗の付け方について 118
4 【8】釜の蓋を開けるについて 123
5 【7】柄杓を構える(合の向き)について 126
6 茶書の記述と現在の状況との比較検討 130終章 点前が変化すること 133
1 本書の議論のまとめ 133
2 点前が変化した方向性をめぐる仮説 134
3 点前の変化についての再考 137
4 点前の変化と家元の役割 139
5 さいごに 141■資料編
資料1 調査対象流派の系譜 145
1 点前からみた流派の問題 145
2 Aグループ・千家系I および Bグループ・千家系II 146
3 Cグループ・有楽系 160
4 Dグループ・南坊系 164
5 Eグループ・その他 166
6 Fグループ・石州系 171
7 Gグループ・三斎系 183
8 Hグループ・遠州系 186
資料2 44流派の点前の調査方法 189
資料3 類型化における判断 193
資料4 参考文献等 198
あとがき 205
索引 210