荒木優太(編著)(2019年9月1日刊行,明石書店,東京, 286 pp., 本体価格1,800円, ISBN:978-4-7503-4885-8 → 目次|版元ページ|特設ページ)
読売新聞の小評が公開された:三中信宏「在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活…荒木優太編著」(2019年12月1日掲載|2019年12月9日公開)
研究者といえば、大学や研究機関などに所属し、“職業研究者”として給料をもらっていると思われがちだ。しかし、本書の「在野研究者」とは、他の仕事によって生計を立てながら、それと並行して研究を続ける人々を指している。
本書に寄稿している計15名ははっきり言えば「在野研究プロフェッショナル」たちである。その彼らがこれから歩みだそうとする「在野研究ビギナー」たちを念頭に編まれた本書は章それぞれに野心的であり、同時に現代社会の中で研究とはいかなる営為なのかを鋭く問いかけている。
ともすれば大きな研究チームを率いて高額の実験機器を駆使した“ビッグサイエンス”的研究が目立つニュースになりやすい。しかし、けっして大規模ではない在野研究が成果を挙げられる研究テーマも数多くある。そもそも、個々の研究者の中で「職業的/在野的」という境界線すらあいまいになることもあるだろう。こう考えれば、一般社会に蔓延する研究者のステレオタイプ像はがらがらと崩れてしまう。まるで万能酸のようにキケンきわまりないガイドブックだ。(明石書店、1800円)
三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年12月1日掲載|2019年12月9日公開)
ワタクシの書評では,「在野研究者/職業研究者」という大きな対比軸とともに,在野研究者カテゴリー内での「ビギナー/プロフェッショナル」という小さな対比軸を示しました.研究者は誰もがこの二つの軸が張る連続的な “研究者平面” のどこかに位置するということです.野心的にしてキケンな本.なお,ワタクシが使おうが,ダニエル・デネットが使おうが,「万能酸」は “褒め言葉” 以外の何物でもない.