『科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す[増補版]』

須藤靖・伊勢田哲治
(2021年5月30日刊行,河出書房新社,東京,342 pp., 本体価格2,000円,ISBN:978-4-309-25427-2版元ページ

出たばかりのこの改訂版が届いた.旧版:須藤靖・伊勢田哲治科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す』(2013年6月30日刊行,河出書房新社[河出ブックス・057],東京,301 pp., 本体価格1,500円,ISBN:978-4-309-62457-0目次版元ページ)旧版の書評:三中信宏科学と科学哲学との重層的すれちがい」(2013年7月19日)|三中信宏科学と科学哲学との重層的すれちがい(続)」(2013年7月20日).

今回の増補版では,松王政浩・谷村省吾の「『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す 増補版』への提題」が公開され,それを踏まえた増補対談(pp. 309-342)が追加されている.

科学と科学哲学との関係の親疎は分野ごとにぜんぜんちがう.そこのところを考えないと論議がすれちがうとワタクシは考える.2019年にゲンロンカフェで伊勢田さんと話をする機会があった:Togetter -「【ゲンロンカフェ】伊勢田哲治×三中信宏 司会=山本貴光「科学と科学哲学――はたして科学に哲学は必要なのか?」」※そのときにも科学哲学との “付き合い方” の多様性を感じた.ワタクシの場合は,生物体系学理論という “特殊なサイエンス” を生業としていたので,科学哲学は “となりのトトロ” みたいな身近な存在だったのだが,他の自然科学分野だとそういう親近感はないようだ.科学哲学を必要とする科学と必要としない科学がはっきり分かれている状況だ.しかも,科学者コミュニティーが直面する問題状況が変化するとともに,科学哲学との付き合い方の濃淡も変動する.